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Last Chapter

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「……真也さん、ありがとう。いつかはエタニティリングがほしかったのよ。それに、大好きなヴァン◯リだし。ものすごーく、うれしいっ!」
 紗香が満面の笑みで、おれを見つめた。

 エタニティリングとマリッジリングが収まった紗香の左手には、ヴァン◯リのアルハンブラ・スモールモデルの時計が手首にあった。また、彼女の首元には同じシリーズのヴィンテージ・アルハンブラのペンダントがきらめいている。
 二つとも、シンプルな白蝶貝マザー・オブ・パールがあしらわれていて、紗香のいつまでも変わらぬ清楚な雰囲気によく似合っていた。

 もちろん、おれが今までにプレゼントしたものである。

 おれと結婚しても、紗香に実家でいた頃と変わらず、満ち足りた生活をしてもらえるように、ただそれだけを思って、たとえ「参勤交代」生活であろうとも、今まで身を粉にして働いてきたのだ。


 ゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜


 食事を終えて、取っていたスイートに入った。すぐに、ルームサービスで頼んだシャンパンとオードブルが届く。

 おれと紗香は、リビングルームのソファにゆったりと座って、眼下に広がる大阪の夜景を眺めながら、フルートグラスを軽く合わせて「結婚二十五年の銀婚式」を乾杯して祝った。

「……あたし、幸せよ。……真也さんと結婚できて、本当によかった」
 紗香が瞳をうるうるさせて、おれを見上げる。

   エステでケアした肌は、すっかりみずみずしく甦っていた。ハーフアップに結われた髪はツヤツヤの証、天使の輪が輝いている。

 おれは紗香を抱き寄せて、ちゅっ、とキスをした。

「おれの方がもっと幸せさ。……紗香、愛してる」

 もう一度、今度はもっと深く口づけしようと顔を寄せると、なぜか、やんわりと制された。

「真也さん……あたし、あなたに聞いてもらいたいことがあるの」
 紗香はこの上なく真剣な顔をしていた。

 ——な、なんだ? まだ、なにかあるのかよっ⁉︎

「あ…あたしっ……東京の家を出たいの」

 ——紗香……おまえ……
 この期に及んで、なに言ってんだ⁉︎

 
「この一週間、大阪で真也さんと生活してみて、あなたは別にあたしがいなくても、ちゃんと暮らしていける人だとわかったわ」

 ——ちょっと、待て。

「平日は会食で夜遅いし、休日は接待ゴルフでしょ?この前の日曜日は、疲れてるでしょうに、あたしが大阪にいるからって、どこかへ連れ出そうとしてくれて、却って気を遣わせちゃってごめんね」

 ——いったい、何の話をしている?

「そもそも、結婚しているったって、こんなに長い間『別居状態』ですもんね。……こんなんじゃ『夫婦』って言えないかもね」

 おまえ、もしかして——

「だから、あたし……」
 紗香が凛とした目で、おれを見据えた。

  ——おれは、絶対に、おまえと離婚なんてしないからなっ‼︎

「……大阪に引っ越してきて、真也さんと一緒に暮らしたいのっ!」

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