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Chapter 7
①
しおりを挟む翌朝は、紗香が筋肉痛でベッドから起きてこられなかった。
明後日に出ないだけ、まだ若いと言えるかもしれないが、やはり運動不足なのは否めないだろう。昨日、今までの彼女ではあり得ない体位を強いて無茶をさせたのは、ほかでもないこのおれである。
だが、一度あんなふうなセックスをしてしまったからには「クオリティ」は落とせないし、落としたくない。
きっとそれは、紗香の方だって同じに違いない。いや、むしろ、そういうことにかけては、オンナの方が貪欲だ。
——こうなれば、四十八手すべてにトライしてみるかな。紗香をジムに入れて、鍛え直すか。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
月曜日の朝から、そんな不埒なことを考えながら出社したのがいけなかったのか……社内にはなんだか、不穏な雰囲気が漂っていた。
これから始まる会議に関して確認したいことがあったため、専属秘書の伊東を探していた。秘書室の前を通り、もしかしたら、と思って入ってみる。
すると、PCでデスクワークをしていたスリートップ(彼女たちは「乙ゲー」かもしれない)と豊川が、バッと一斉におれの方を見た。普段、おれがグループ秘書たちの部屋に入ることはないからびっくりしてるのだろう。
——だが……それにしてはえらくダイナミックに振り向いたな。
「……まさか、専務が向こうから飛び込んで来はるとは」
興戸が、まつ毛エクステの瞳をバサバサさせて「ありえへん」という顔をしている。
「飛んで火に入る夏の虫や。ええ機会やないの。直接、本人に訊いてみはったらよろしいやん?」
七条が目を細めて、日本人形のように無機質に笑っている。
「ええっ、あんなこと……だっ、だれが訊くんですかっ⁉︎」
豊川が青ざめた顔で、声を張り上げる。
「興戸、あんたぁ、帰国子女やろ?大得意の『場の空気』を読まれへんとこ、発揮して訊かはったらどない?日本語が苦手やったら、別に英語で訊かはってもかまへんのやで?」
「やかましわっ、七条。うちは帰国子女や言うても、イン◯ネシアの日本人学校育ちやから、英語はしゃべられへんの知ってるやろがっ!どうせ、大学もC推薦やっ!……あぁー腹立つっ‼︎ アンタこそ、無神経な『いけず』言わせたら天下一品やねんから、今こそそれを発揮して訊きぃやっ!」
「アホか。アンタらが押しつけあってどうすんねん。……今さら、なにを言うとう?」
鳴尾がスナイパーのような鋭い目線を、豊川に向けて走らせる。いや、ヒットマンかもしれない。
その直後、興戸と七条の頭の上で、豆電球が光った。
「「「豊川、なにしてる⁉︎ 早よ訊けっ‼︎」」」
スリートップの声が揃った。
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