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Chapter 5
③
しおりを挟む寝室でベッドの隣に横たわる妻に、声をかける。
「……明日、やっと休みなんだ。せっかく大阪に来たんだから、どこか出かけないか?」
豊かでやわらかな髪を弄びながら訊く。
「行ってみたいところはないのか?車もあるし、どこへでも連れてってやるぞ」
大阪からのドライブは府内だけでなく、阪神高速の湾岸線で神戸、第二京阪で京都、その先京滋バイパスを使えば琵琶湖、さらに第二阪奈で奈良、阪和道で和歌山と選り取り見取りだ。
「……うーん……そうねぇ……」
なんだか、気乗りしてなさそうだ。
「……紗香?」
引き寄せて、顔を覗き込む。とろーんとして、子どもの気配が漂っていた。
もしかして、眠いのか?と思ったら、次の瞬間、くーっと眠っていた。
「おいっ……まだ寝るなよっ」
焦ったおれは、彼女をゆさゆさと揺さぶる。だが、いったん眠りについた紗香は起きない。
——夕飯のときには確か、期間限定の氷◯ ルビーグレープフルーツを一本しか呑んでなかったはず……
彼女は割と酒好きで、酔うとご陽気になってますますかわいいのだが、そんなに強くないため眠たくなるタイプだ。だからといって、さすがに缶チューハイ一本くらいで潰れるわけはない。
——明日休みだし、おれだって酒もセーブしたし、今夜はおまえを、思うぞんぶん抱こうと思っていたのによっ。
おれは、はぁーっと盛大にため息を吐いた。
紗香、なんだか、今夜のおまえ……やけに疲れてないか?昼間、どこへ行ってたんだ?まさか、あの歳下のホスト(推定)と会ってたのか?
——会って、どこで、なにをしてたんだ?
結局、目が冴えてあまり眠れないまま、朝を迎えた。人の気も知らず、妻は隣で爆睡している。あどけない顔をして、幸せそうに眠っている。
思わず引き寄せて、ぎゅーっと抱きしめる。朝が超弱い彼女は、こんなことくらいでは起きない。
「……ぅん……」
くちびるから微かに漏れ出た声を、おれのくちびるで塞ぐ。
——あぁ、なんてかわいい。
もう一度、ぎゅーっと抱きしめる。
——絶対に、よその男なんかに渡さない。
紗香は未来永劫……おれのものだ。
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