もう一度、愛してくれないか

佐倉 蘭

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Chapter 3

④ ♡

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「ま…まだ、上がってないわよっ。……ただ、月経アレの間隔がだんだん短くなってるから、もう子どもができることはないかな…って」
 むすっ、とした顔で妻は言った。

「すまん、おれが悪かった。許してくれ」
 おれは必死で謝った。
 ——いくら三十後半に見えるったって、アラフィフだもんな。
 ちょっと、感慨深くなる。

「……あたしのこと、もう女として見られないでしょっ」
 彼女がぷいっ、と横を向く。

「そ…そんなこと、あるわけないじゃないか。むしろ、うれしいよ。ナマでできるんだから」

「妻」という生物は、夫に対してはエスパー並みの超能力を発揮するのだから、読み取られたら困るような迂闊なことを考えてはいけない。

「……『膣内ナカ』でだって出していいんだろ?」
 おれは彼女の柔らかな髪をもてあそびながら、耳元でささやく。おれの声は低くてよく響くらしい。彼女はまだ横を向いたまんまだが、頬をぽっ、と赤らめた。

 おれはすかさず、着ていたパジャマ代わりのTシャツを脱ぎ始める。忙しいにもかかわらず、ジム通いで鍛え続けている引き締まった上半身があらわになる。

 ——そもそも、おまえを抱けない夜に気を紛らわせるために、夜中でもやってるジムに入会したんだぞっ。

「……紗香」
 ここぞ、というところで名前を呼んで、頬を撫でる。少し、甘えるような声でねだる。

「紗香が……最後までほしい」

「……もおっ!ずるいっ」
 紗香がおれを見て、抱きついてきた。


 しっかりと潤った紗香の膣内に、猛ったおれの怒張モノをぐうぅーっと沈める。

 かなり、ひさしぶりの……ナマの感触だ。

 二人目を諦めた頃——息子が高校生になるくらいからまたゴムを着け始めたので、それ以来だった。最近のものは超薄とか極薄とかうたっているが、やはり隔てがあるのとないのとでは、大違いだな。

 彼女の方もそうみたいで、いつもより感じてるらしく、おれのモノをきゅううぅっとホールドしている。早く動かすと、お互いすぐにイッてしまいそうだ。


 思いっきりセックスできるようになったというのに、今度は勃たなくなるかも、なんて悩みが来るとはな。ある意味、神様は公正公平だ。
 若いときなら、もう一回、さらに一回、と一晩中でも「元気」でいられたのに……

 だからこそ、今は最初の一回に(それきりになっても悔いが残らないように)「全力投球」することが大事になってくる。
「心の込め方」が若いヤツらとは違うんだ。別に歳を喰ったからって、テクニックが向上するっていうわけじゃないんだ。

 今日は酒も呑んだし、一回しかできないだろう。この歳になると、呑んだら覿面てきめんに下半身が弱くなる。

 ——せめて今夜は、紗香が特に悦ぶやり方で、徹底的に攻めてやろう。

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