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Last chap. あたしの愛しい人

⑨ ♡

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「……満足したよ……すっごくね」

   そう言うと、諒くんは目を細めて微笑んだ。

「だってさ、七海……」

   妙齢の女性、とはよく言うが、諒くんくんからは「妙齢の男性」の色気が、この上もなくダダ漏れているんですけれども……

「もうこれで……おれからは、一生、離れられなくなっただろ?」

——すっかりお見通しの図星、ってわけだ。

   あたしは諒くんを、きゅっ、と睨んだ。だけど、恥ずかしさのあまり、はにかんでしまった表情は、どうやら隠しきれなかったようだ。

   諒くんはさもうれしそうに、くくっ、と笑って、あたしをぎゅーっと抱きしめた。

「だ、だって……あたし、諒くんに満足してもらえること、なにもできな……」

「いいんだ」

   言いかけた言葉をバッサリと遮られた。

「七海は……なにも、しなくていい」

   そして、耳元で……熱い息で、ささやかれる。

「……その代わり、おれがとことん、おまえのカラダの隅々まで、甘やかしてとろけさせてやる」

   諒くんの瞳に、禍々まがまがしいほどの妖しい光が、ぎらり、と走る。

「今までの男をすっかり忘れさせて、おれ以外では、満足できなくなるほどのカラダに、すっかり生まれ変わらせてやるからな」

   そのとき……わかった。

   先刻さっきのラウンドで、彼があたしをとことんまで「らした」原動力は……

   蠍座の諒くんの——「独占欲」だ。


「もちろん、すでにプロポーズもしてるし、もう一生、手放す気はないから」

   諒くんのストレート過ぎる言葉に、あたしは舞い上がりたいほどうれしくなって、飼い主に甘えたいときのネコのように諒くんの胸板へ擦り寄った。

   諒くんのシトラス系のフレグランスと、あたしのフローラル系のフレグランスに、今日一日を終えた互いの汗の、麝香のような匂いが相まって——

   ぞくぞくするほど……煽情的な香りを醸し出していた。

「……だから、ななみん、大丈夫だからね。まぁ、そうなったらそうなったで、大手を振って結婚できるから、むしろ大歓迎だ」

   まるで家ネコのふさふさした毛並みを撫でるかのような手つきで、諒くんはあたしの髪を愛しげに撫でた。その声まで、猫なで声になっている。

   すっかり「飼い主」に懐いてしまったあたしは、大好きな「ご主人様」の顔を見上げた。

   すると、諒くんが満面の笑みをたたえ、とろけるような甘い眼差しで、あたしを見下ろしていた。

   でも、なんだか「悪代官」や「越後屋」に見えなくもない、ほの暗い笑顔なのは……

——気のせいかな?

「ごめんな。 最近、ご無沙汰だったから『持ち合わせ』がなくて……」

   それって、まさか——

「えええええぇーーーっ⁉︎ まさか、諒くん、ゴムも着けずに胎内なかで出しちゃったのっ⁉︎」

   あたしは絶叫した。

「あたしっ……『中出し処女』だったのにーーーっ!」

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