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Last chap. あたしの愛しい人

⑧ ♡

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   今までつき合ってセックスしたひとと、結婚する相手の諒くんとを較べるなんて……

——本当は、してはいけない、非常識なことかもしれないけれど。

   「初めて」の相手だった目黒先輩は(悪いけど)あまりにも比較対象にならないお粗末さだったから、ノーカウントとして。

   あたし史上最高に、焦らされて、喘がされて、き叫ばされ……
   相性が「最高によかった」あの赤木さんとのセックスと較べても……

   諒くんは——抜群にすごかった。


   思えば、獅子座の赤木さんがあたしをとことんまで「焦らせる」原動力は……「征服欲」だったと思う。

   そもそも、あたしにとって、身も心もひれ伏した「恋」だった。

   ベッドの上でも、徹底的に赤木さんに組み敷かれ服従することで、あたしは彼への「忠誠心」を示そうとした。
   彼からのとんでもない「要求」に応えるのと引き換えに、彼からはとてつもない「快楽」を与えられた。

   でも、それは、逆に言うと……あたしはセックスに関して、赤木さんを思いっきり「甘やかして」しまったかもしれない。

   もしそうであったのなら、巧妙な「策士」のわりに「恋愛偏差値」は決して高くないと思われる「箱入り娘」の桃子さんが……

——どれだけ赤木さんの「要望」に応えられているのだろうか?

   どうも、桃子さんって典型的な「マグロ」じゃないかと思うのだけれども……違うかなぁ?

   赤木さんが、どんなに外堀を埋められようと、決して桃子さんと結婚しようとしないのは、もしかして……

——「そういうこと」も原因の一つのような気がしてならない。


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   あたしと諒くんはたった今、激しい一ラウンドを終えて、お互い荒くなった息と、頂点を極めたカラダをなんとかなだめているところだ。

「七海……」

   諒くんの腕の中で、甘く名前を呼ばれる。

「『おねだり』……すっげぇ、かわいかった」

   頬に軽く、ちゅっ、とキスされる。

「……諒くん……」

   あたしは、熱く潤んだ瞳で彼を見上げる。

「えっと……あたしばっかで……諒くんは……満足……できた……?」


   赤木さんのときには、あんなに「忠誠心」を示して、ベッドの上では彼の言うがままに尽くしてきたあたしなのに……

   諒くんに抱かれているときのあたしは、桃子さんのことを言えないほど(って、勝手な想像なんだけれども)の「マグロ状態」だったのだ。

   と言っても、あたしがそう望んだわけではもちろんない。

   だって諒くんのためなら——どんなことでも、どんなに恥ずかしいことでも——なんでもするし、なんでもしたいのに……

   だけど、彼からはなにも要求されず…… いや、あたしがなにかすることすら禁じられてしまった。

   そして、あたしのカラダの至るところを自在に這う……彼のくちびるによって……彼の細長い指によって……

   あたし一人だけが極限の一歩手前まで、ただ一方的に高められていったのだ。

   なのに、諒くんは、あたしが一番ほしいと思うものだけはどうしてもくれなくて……

   だから、はしたなくも、とうとう懇願するように——「おねだり」してしまった。

   こんなことは……赤木さんのときでもなかった。

   すると、彼はぞくぞくするように妖しい、心底満足げな笑みを浮かべて……やっと猛々しい彼自身を、あたしに与えてくれた。

   あたしは貪るように彼の「分身」を胎内なかに受け容れて……それからあとは子宮の入り口に向かって……えぐるように突いてくる……彼の激しい抽送にただただ身を任せた。

   そして、天国なのかそれとも地獄なのかわからないこの世の果てへとさらわれていく淫靡な快感を、心ゆくまで思うぞんぶん味わったのだ。


——あぁ、あたしは、この人のカラダからは……もう、離れられない。

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