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Chap.6 元カレの赤木さん 2
⑭
しおりを挟む「見合い相手は、親父さんの部下で『T大出身のエリート官僚』なんだろ?」
あたしを抱えながら、赤木さんが少し憫むような目で見る。
「なぁ、七海。おれにすら『素』を見せられなかったおまえが、そんな出会ったばかりの堅苦しいヤツに自分を曝け出せるわけねえだろ?」
——ところがどっこい、初めて会ったお見合い当日から、恥ずかしいまでに曝け出しまくり、なんだけどもね。
そうなのだ。あたしはなぜか出会ったときから……諒くんには『素』を出しまくり見せまくりなのだ。
そして、それは、たぶん……
——諒くんだってそうなんじゃないか、って思うんだけれども。
それに、諒くんは確かに「T大出身のエリート官僚」だけど……ちっとも「堅苦しいヤツ」じゃないし。
だって、諒くんは……
あたしがどんなにおバカなことをやらかしても、こともなげに受け容れてくれるどころか……
いつもの人造人間な表情を、こっぱみじんこにぶっ壊して爆笑しながら……
——あたしをすっぽりと包み込んでくれるもん。
あたし、今……はっきりとわかった。
この人生を……これからの先の……あたしのこの人生を……
——諒くんと一緒に歩みたい。
「心を決めた」あたしの顔に——ふっくらとした穏やかな笑みが広がった。
「な……七海……」
その顔を見て、赤木さんが感に耐えかねたように、あたしをぎゅっと抱きしめる。
——いやいやいや、違うからっ!
この「笑顔」は、あんたのためじゃないっつうのっ!諒くんに向けたものなんだからっ!!
「七海、おれ、おまえにそがん顔ばされたら……もう、ガマンできんけんっ。あっちんベッドへ行くばいっ!」
赤木さんが先に立ち上がり、あたしの腕を引っ張って立たせようとする。
「違う、違う、待ってっ!赤木さんっ、あたしの話を聞いてっ‼︎」
ひたすらベッドへ連れ込もうとする赤木さんに、あたしは必死で抵抗する。
——だけど、男の人の力に抗うのも限界がある。
するとそのとき、カウチソファの端にスプリングコートとともに置いてあった、あたしのフ◯ラのパイパーから、着信のバイブ音が聞こえてきた。
途切れることなく続くそれは、トークのメッセージではなく、通話が来たということだ。
赤木さんの手がほんの一瞬、緩んだ。
あたしはその隙をついて身を翻し、バッグに手を突っ込んで速攻でスマホを取り出す。
——もしかして……諒くん……?
あたしは一縷の望みを賭けて【応答】をタップする。
「もしもしっ!」
スマホの向こうの人に呼びかけた。
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