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Chap.6 元カレの赤木さん 2

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   今度はもう、赤木さんに「遠慮」はなかった。

   貪り尽くされるんじゃないか、っていうほど、荒々しいくちづけが始まる。
   息苦しくなって、酸素を取り込むために思わずくちびるを開いたら、すかさず彼の舌が入り込んできた。

   口の中に入ってきたが最後、迷わず直進してきた彼の舌にあたしの舌は捕らわれ、逃げても逃げても逃げきれない。
   首を振って逃れようにも、いつの間にか後頭部が彼の大きな手のひらでがっちりと「固定」されていて、思うように動かせない。

——頭が、くらくらする……

   思うように息ができない酸欠からだろうか?
   それとも……こんな至近距離で彼のブル◯プールオムを、まともに吸い込んだからだろうか?

   そしてあたしは、石鹸のようなのになぜかスモーキーさも感じられる、不思議なフレグランスに包まれて……

   ゆっくりと……カウチソファに沈められていった。

   赤木さんのくちびるが、あたしのくちびるから首筋に移っていく。

   あたしの脳裏に、ただひたすらしあわせだった、彼にどっぷり浸かっていたあの半年間が甦る。

   そのとき、ふと、あたしの首元で彼の視線がが止まった。

「……七海、おまえにしちゃ、大人っぽいネックレスだな……でも……すんげぇ似合ってるよ」

   あたしの鎖骨で輝く紫色のアメシストを見た彼が、少しかすれ気味の声で魅惑的にささやく。

   だけど、そのネックレスは……

——先月、諒くんからもらった、誕生日のプレゼントだった。


   頭の中が霞みがかった状態だったあたしは、ようやく、ハッ、と我に返った。

——あたしには今、諒くんがいるんだ。

   そう思うと、視界がはっきりと開けてきた。

   まだ、あたしがあの人の「彼女」かどうかはわからないけれど、お見合いしてお互いそのまま会い続けようとしているのだから……

   ほかの男性ひととこんなふうになるなんて、言語道断だ。それに、もしこんなことが知れたら、うちのおとうさんの顔を潰すことにもなる。

   ううん、そんなことよりも……

——諒くんに、嫌われてしまう。

   愛想を尽かされて、このお見合いが破談になったら、諒くんとは、もう二度と会えなくなる。

   クール過ぎる「人造人間サイボーグ」の普段の顔からは、まったく想像できない……
   『諒くん』と、あたしが呼んだときの……はにかんだ、あのかわいい顔が……もう二度と見られないなんて……

——そんなの……ぇーーーっ対に、イヤだっ!


「赤木さん、あたし、お見合いをしたの」

   あたしは赤木さんを見上げて、きっぱりと告げた。

「知ってる。すでに青山から聞いてるし、先刻さっきおまえからも聞いた」

   なのに、赤木さんは構うことなく、タイトスカートにインしていたベルスリーブのカットソーをたくし上げた。中からレースをあしらったキャミが現れる。

「ちょ、ちょっとっ!赤木さん……っ!?」

「七海、服がシワになる……向こうのベッドへ行こう」

   そして、赤木さんはつい先刻あたしをやさしく押し倒したその手で……

   今度はあたしを強引に引っ張り上げて、ソファセットの向こうにある巨大なベッドへ連れて行こうとする。

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