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Chap.5 元カレの赤木さん
⑫
しおりを挟む『七海、気をつけなよ?今回のことでわかったけど、武田さんって同期の人たちからあんまりよく思われてないよ。「専務の娘」だからさ、みんな大っぴらにはできないみたいだけど」
——そんなことって……
『だから……七海と仲よくしてたんじゃない?後輩相手だったら、自分のペースで思うようにつき合えるもんね』
——そんなの、なにかの間違いだ。
入社してからあんなに良くしてくれていた桃子さんが、そんなことをする人ではないのは、あたしが一番よく知っている。
もし、本当に二人が「お見合い」をしていたとしても、それは止むに止まれずのことだ。
やさしい二人はきっと、あたしには言えなかったに違いない。
そして、あたしに知られる前に、なんでもなかったように収めるつもりでいたのだろう。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
お昼休憩が終わり、友佳と別れたあたしは秘書室に戻った。
デスクには桃子さんがいて、午後の業務に取りかかろうとしていた。島村室長は副社長の執務室にいるのか、ここにはいなかった。
『あの……桃子さん』
あたしが話しかけると、桃子さんはゆっくりと顔を上げた。そして、頬にかかったダークブラウンの髪を、ヌーディーなピンクが施されたネイルの細長い指で、やわらかく払いながら……
『なあに?……七海ちゃん』
桃子さんはゆったりと笑った。
『えっと……社内でウワサになってるらしいんですけど……』
情報源である法務部の人たちの名前を出すわけにはいかなかったから、あたしはとりあえず、そのように切り出した。
すると、桃子さんはかすかに眉を寄せて、
『……そう、もうウワサになってるのね』
ため息混じりにつぶやいた。
『七海ちゃんは、まだ聞いてないの?』
この質問は、友佳からもされた。
『な…なにを……ですか?』
思わず上擦って震えてしまう声は、どうすることもできない。
『……わたしたちが結婚すること、隼人さんから聞いてない?』
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