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Chap.5 元カレの赤木さん

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『七海、気をつけなよ?今回のことでわかったけど、武田さんって同期の人たちからあんまりよく思われてないよ。「専務の娘」だからさ、みんな大っぴらにはできないみたいだけど」

——そんなことって……

『だから……七海と仲よくしてたんじゃない?後輩相手だったら、自分のペースで思うようにつき合えるもんね』

——そんなの、なにかの間違いだ。

   入社してからあんなに良くしてくれていた桃子さんが、そんなことをする人ではないのは、あたしが一番よく知っている。

   もし、本当に二人が「お見合い」をしていたとしても、それは止むに止まれずのことだ。
   やさしい二人はきっと、あたしには言えなかったに違いない。

   そして、あたしに知られる前に、なんでもなかったように収めるつもりでいたのだろう。


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   お昼休憩が終わり、友佳と別れたあたしは秘書室に戻った。

   デスクには桃子さんがいて、午後の業務に取りかかろうとしていた。島村室長は副社長の執務室にいるのか、ここにはいなかった。

『あの……桃子さん』

   あたしが話しかけると、桃子さんはゆっくりと顔を上げた。そして、頬にかかったダークブラウンの髪を、ヌーディーなピンクが施されたネイルの細長い指で、やわらかく払いながら……

『なあに?……七海ちゃん』

   桃子さんはゆったりと笑った。

『えっと……社内でウワサになってるらしいんですけど……』

   情報源ニュースソースである法務部の人たちの名前を出すわけにはいかなかったから、あたしはとりあえず、そのように切り出した。

   すると、桃子さんはかすかに眉を寄せて、
『……そう、もうウワサになってるのね』
   ため息混じりにつぶやいた。

『七海ちゃんは、まだ聞いてないの?』

   この質問は、友佳からもされた。

『な…なにを……ですか?』

   思わず上擦って震えてしまう声は、どうすることもできない。

『……わたしたちが結婚すること、隼人さんから聞いてない?』

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