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Chap.4 初カレの目黒先輩

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「目黒先輩……新田にったCチーフPプランナーは、たぶん戻って来ないっすよ?」
   三人の男の人のうち、残りの一人が言う。

   スマホを片手に出て行った「新田CP」と呼ばれた人が一番歳上で、間に目黒先輩を挟んで、この人が一番歳下っぽい。

「あの人、奥さんには頭上がんない人だからなぁ。……じゃあ、お開きにしよう」

   目黒先輩が「宣言」する。とたんに、小林ちゃんが「ええぇーっ!?」という顔になった。

「おい、おまえこの子を送って行ってやれよ」

   目黒先輩が「指示」する。とたんに、後輩の彼が「ええぇーっ!?」という顔になった。

「それより、先輩は今来たあの子と知り合いなんすか?」

   そう言って、あたしの方を見る。

「ああいうかわいい感じの小動物系、もろタイプなんっすけど、紹介してくれませんか?」

   ひそひそ話してるつもりだろうけど、まる聞こえなんですけれども。男の人ってナイショ話がヘタだなぁ。

——あぁ、それにしても、小林ちゃんから向けられた視線が痛い。

   ほら、小林ちゃんにもしっかりと聞こえてるじゃん。

   すると、目黒先輩が、
「だれがおまえみたいなチャラいヤツに紹介するか。それに、ああいう見かけだからっておまえみたいなのが手に負える相手じゃねえよ。とっとと、この子を駅まで送ってやれ」
   眼光鋭く、ぎらりと睨んだ。

「えぇーっ、先輩ひっでぇなぁ」

——悪かったね。外見と中身が違うくって。

   どうせ、昔あんたから『全然イメージが違うじゃんよ。こんなふうな子だとは思わなかった』って言われた女だよっ。

——ところで、小林ちゃんなら、その「チャラい」彼に送らせても大丈夫なの?

   ちなみに、その小林ちゃんは「広告代理店の人とお近づきになれるかも」という心情を、余すところなく表情であらわしていた。


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   そのあと、後輩くんは渋々ながらも小林ちゃんをメトロの駅まで送っていくことになり、二人でお店を出て行った。

「……ななみん、せっかく来たんだからさ。奢るから少しは呑んでいけよ。イケる口だろ?」

   目黒先輩が目でカウンターの方を促す。

「個室で一緒に呑もう、なんて言わないからさ」

「じゃあ……わたしもこれで退散するわ。お役目は果たしましたよ、先輩」

   千夏がひらりと左手を上げて、反対側の出口に向かって歩き出す。

「おう、世話をかけたな、緑川」

   目黒先輩も右手を上げて返す。

「いえいえ、あとは、お若い者同士で……」

   まるで、お見合いの常套句のようにそう言って、千夏は高らかに笑いながら去って行った。


——ちょ、ちょっと、待ってよ!? いったい、どういうこと!?

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