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Chap.4 初カレの目黒先輩
①
しおりを挟む諒くんの「予告」どおり、あれからあたしたちが会えない日が続く。
もともと、用でもない限りL◯NEとかしそうにない人だろうな、とは思っていたが……
案の定、彼からのL◯NEは、
【悪い。仕事が忙しくて、今週末も会えそうにない。インフルが流行ってるが、風邪とかひいてないか?】
という最低限度の「安否確認」だった。
そういうあたしも、
【了解しました。こちらは元気です。そちらこそ、身体に気をつけてお仕事がんばってください】
と「業務連絡」みたいな返信だけれども。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
二月の終わりの金曜日、定時で会社から帰ってきたあたしは、自分の部屋でテレビを見ていた。
そのとき、ローテーブルの上に置いたスマホが、ヴヴヴ…と鳴った。
一瞬、諒くんからの「安否確認」かな?と思ったが、違った。今週末は妹さんの結婚式だから、会えないのはすでに「決定事項」だった。
【ななみん、今から通話してもいい?】
学生時代の友達の緑川 千夏からだ。
——ちなっちゃんから連絡がある、ということは、彼氏と別れてフリーになったということだな?
あたしは【OK~♪】のスタンプを送った。
『……ななみん、今どこ?』
すぐにかかってきた通話の向こう側は出先からだろう。少し騒がしかった。
「家だよ。自分の部屋でテレビ観てる」
あたしは地上波でジ◯リの映画「耳をすませば」を観ていた。
高校受験を目前にしてそれぞれの人生の岐路に立つ、中学生の少年・少女の初恋の物語だ。つたない二人のあまりの初々しさに、胸がきゅんきゅんしている真っ最中だった。
『あっそ。……でさ、わたし今、六本木で呑んでるんだけど。ななみん、ちょっと、出てこない?』
——ええっ、いきなり?
相変わらずのムチャ振りだ。ちなっちゃんには昔からそういうところがある。
「えぇーっ、今テレビ観てるって言ったじゃん」
あたしはめんどくさそうな声で言った。
『ななみんの家、赤坂見附でしょ?すぐそこじゃん。この時間だったら、まだお風呂に入ってメイクだって落としてないんじゃないの?』
——そうだけどさぁ。でも、ユ◯クロのルームウェアには着替えてるよ?
『じゃあ、お店の地図はL◯NEで送るからさ。なるべく早くね。待ってる!』
そう言って、通話が切れた。
こんな時間からめんどくさいこと限りなし、だったが。あたしはユ◯クロからこの前諒くんとのデートで着た服に着替えて、崩れかけたメイクをしっかり直した。
千夏が美人ですらりとしたいいオンナなので、「落差」はなるべく小さい方が望ましい。
それに、女子会とはいえ、いや「女子会」だからこそ、ヘタなものは着られないし、メイクもおざなりにはできないものなのだ。
ま、その辺の居酒屋だったら、もうちょいテキトーでいいんだけれども、L◯NEで送られてきたのがそこそこ小洒落たイタリアンのバールだったのだ。
——どうせ、今週末も諒くんとのデートは「お預け」なのだから、たまには夜遅くまで女同士で呑むのもいいか。
それに「お見合い」のことを報告しなくちゃなんないしね。
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