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Chap.3 お見合い相手の田中さん 2

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   映画を観たあと、あたしたちは台場のインターから首都高に乗って都心に戻ってきた。

   諒くんの運転するレ◯サスRC Fは西銀座の駐車場に入った。ア◯アシティを出る際に彼が予約を入れていたのだが、駐車場が予約できるなんて初めて知った。予約料金として別途五〇〇円かかるらしいが。

「またゲートの前で待つのはイヤだろ?」
   ナビシート側に回って、ドアを開けてくれた諒くんがにやりと笑った。


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   そして、今、あたしは諒くんに連れられて、銀座を代表する老舗デパートの松波まつなみ屋のアクセサリーのフロアにいた。

「ななみんは今月の十七日が誕生日だろ?」

——釣書に書いてあったのを覚えてくれてたんだ。

   ちなみに諒くんの誕生日は十一月で、あたしだって覚えている。

「ほんとはそのあたりでもう一度、デートしたかったんだけどさ。休日出勤が続くこのクソ忙しい最中の今月末に妹の結婚式があって、とてもじゃないけどもう休みが取れないんだ」

   諒くんは残念そうに顔を歪めた。

「……だから、まだ二回しか会ってないおれのことを忘れないように、なにか身につけるものをプレゼントさせてくれ」

   そう言って、あたしをジュエリーショップが立ち並ぶ一角へと促した。

「えっ、だって、そんな……」

   突然のことにどぎまぎしながらも、諒くんの歩調に合わせて小走り気味についていく。

   あらかじめどこで買うのかは決めていたらしく、国内のメーカーで最近あたしたちの年代で人気が高まっている「Jubileeジュビリー」というジュエリーショップの前に来た。

「心配しなくていいよ。ハイブランドでもないし、それに、まだ指輪なんて重たいものはプレゼントしないからさ」
   あのいたずらっ子の目をして、諒くんは笑った。


   店内では美しくディスプレイされたガラスケースの向こうで、ここに並ぶジュエリーたちに負けず劣らぬ華やかな輝きを放つ女性が、スマホで通話していた。

「……あぁ、そうそう。そういう路線で考えてみて……うん、そうよ……あとは華絵かえに任せるわ……はい、じゃあね」

   身長はヒールを履いて軽く一七〇センチを超えている。軽くウェーブのかかったブルージュの髪は、いかにも仕事のできるオトナの女という印象でありながら、黒髪のような重たさは一切ない。

   あたしのコートと同じオフホワイトのパンツスーツは、すらりと伸びたその肢体にしなやかに沿って、彼女のすばらしさを最大限に引き出している。

——とにかく、一見しただけで、非の打ち所がないことがわかる女性だった。

   そのとき、通話を終えた彼女があたしたちに気づいた。とたんに、大輪の花が咲いたかのような笑顔になる。

「……やっと来たわね。諒志」


——まさか、このひとが……

   諒くんの言ってた 『遊ぶ相手』とかいうんじゃないでしょうね!?

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