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Chap.3 お見合い相手の田中さん 2

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   そう思ったら、なんだか急に喉が渇いたような気がして、ホルダーからミニ◯ツメイドのカップを取って、ストローでちゅうぅっと飲んだ。

——とりあえず、今は「あたしと」デート中だ。

   余計なことを考えて、せっかくの楽しい時間を台無しにしてはいけない。

   そのとき、照明が落とされて、周囲がすーっと暗くなっていった。

「……もうすぐ、始まるな」
   諒くんがあたしの耳元に口を寄せてささやいた。

   ラーメン国◯館ではテーブルの対面に座っていたから、彼がこんなに近くにいるのは初めてだ。

——なんだか、すっごく耳に心地よく響く声、なんですけれども……

   やだっ、なんだか、胸がどきどきしてきた。

   あたしは突然高鳴る鼓動を紛らわすように、前方のスクリーンに目を向けた。


゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚


   実在する主人公のフレディ・マーキ◯リーはすでに故人だ。

   Qu◯enのボーカルとしてサクセスストーリーを歩むその裏で、愛する妻がいながらも自分は男性しか愛せないのではと、もがき苦しむフレディ。

   結局は離婚することになるのだが、インド系というルーツや宗教観の違いによって親からは得られなかった「家族からの愛」を、それでも元妻メアリーに求めることには変わりはなく、離婚後も隣家に住まわせてまでして彼女に執着する。

   やがて、彼は自らのセクシャリティを受け入れるようになるのだが、Qu◯enが名声を得ていくその影でプライベートではどんどん自堕落になっていく。確実に迎える死に向かって、突き進んでいるに過ぎないのだ。

   そんなフレディの姿を観ているのがつらくなって、スクリーンから目を逸らし、ミニ◯ツメイドのカップをホルダーから取ろうとしたあたしは、ふと隣の席を見た。

   すると、諒くんはすやすやと寝息をたてていた。すっかり照明が落とされた真っ暗な中、スクリーンから差し込まれた光に反射して見えたその顔は……

   普段の無機質な「人造人間サイボーグ」でも、目尻が下がる「かわいい笑顔」でもなく……

——あどけないほど無防備な、まるで少年のような寝顔だった。


   出会ってまだ二回目にもかかわらず、こんな姿をさらけ出されては……

   なんとしても、このひとときの彼の「安らぎ」を……

   妨げるわけにはいかない、護らなければいけない、ってしか思えないじゃない?

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