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Chapter 1
⑥
しおりを挟む「……ということは、やっぱりめずらしいってことだよね?」
対照的に、わたしの表情は暗くなる。
「全体の一割程度らしいね」
——十人に一人、かぁ……
「でも、海外では喜ばれるんでしょう?わたし、よりによってなんで日本に生まれちゃったかなぁ……」
わたしは、はぁ…とため息を吐いて、ボ◯モアをひとくち呑んだ。まんまるの氷が、いつの間にかずいぶん溶けている。
「日本人にもいるからさ。ほら、見て。きみはどのタイプ?似てるおっぱいの子、いる?」
彼が「パフィーニップルのセクシー女優〈まとめ〉」を出してきた。
——へぇ、そんなサイトがあるんだ。物好きな「マニア」がつくったのかしら?
「AVってさ、巨乳とか爆乳とかパケに謳うから、やっぱりおっぱいのデカい子が集まるんだよ。特に『天然のおっぱい』と思われる巨乳ちゃんにはパフィーニップルが結構いるよ。ま、中にはわざわざ乳輪にヒアルロン酸を注入して膨らませている子もいるみたいだけどさ」
なるほど、画面をスワイプしていくと、次々と現れるセクシー女優さんたちはみな、柔らかそうなふわふわ乳輪ばかりだ。
そして、おっぱいが大きいのが「天然」だという証拠に、二の腕やお腹周りや太もも辺りもむっちりとしていて、中にはお世辞にもスタイルが良いとは言えない子もいるんだけれども、妙に生々しくてなぜか印象に残る。(もちろん、明らかに「人工」と思しき子もいるにはいるけれども……)
週刊誌のグラビアなんかで見るテレビや映画の女優やタレントたちの(たぶん)修正されて「造られた」キレイな裸身とは真逆だ。
——それにしても、世の中にはいろんな「おっぱい」があるんだなぁ……
当然のことながら、彼女たちの乳房・乳首・乳輪の色・形・大きさ、どれ一つ取ってみてもまったく同じものはない。
それぞれのカラダに「個性」がある。
——もしかして、やたら完璧なスーパーバディよりも、こういう「リアル」なカラダの方が、逆に男の人にとってはソソるのかも……
なーんて思ってしまう。
だけど——
「へぇ……あなた、かなり観てるんだ?」
わたしは横目で睨みながら訊いた。
「日本を離れていた期間が長かったからね。故郷が恋しくなって、かなり『お世話』になったな。レンタル店に行かなくても、ネットで観られる時代になって助かったよ」
彼はしれっと答えた。
そういえば、彼の着ているスーツは生地も仕立ても良さそうなものだった。ビジネスマンとしてバリバリ働いていそうだ。とても「おっぱい、おっぱい」と連呼するような男には見えない。
カウンターには離れたところに客がいたが、顔を寄せてスマホを覗き込んでいるわたしたちが、まさかエロ画像を見ながら——さすがに男女のカラミがあるものではないけれども——「パフィーニップル」について話をしているなんて、夢にも思わないだろう。
そもそも、ここは海外でも有名な系列のホテルだし、さらに酒をこよなく愛する人がしみじみと呑む、オーセンティックバーなのだ。
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