パフィーニップル

佐倉 蘭

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Chapter 1

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「……ふうん、そんなに気になるもんかなぁ?」

「なるっっ!」
 わたしはきっぱりと断言した。だが、恥ずかしさのあまり顔は上げられない。

「でもさ、今までつき合った男はセックスのときに見てるわけだろ?それとも、きみ……まさか、処女?」

「ち、違うしっっ!」
 かなりなことを訊かれてるはずだが、メンタルが削られすぎて、なんだかもう判断できない。

「じゃあ、つき合ってた男からなにか言われたの?」
「言われてない。……っていうか、エッチのときは部屋を真っ暗にしたし、旅行に行っても大浴場へ行ってたし……絶対に見せなかったもん」

 女友達ですら、この胸は見せてないのだ。たとえ温泉旅館に泊まったとしても、「ごめーん、生理になっちゃったから、お部屋のお風呂使わせてもらうね」と言って、決して大浴場へは行かない。

 Eカップなんて、そこまでは要らなかった。重たい胸なんて、肩が凝るだけだし……
 Cカップくらいで胸の「成長」が止まってくれていたなら、と何度思ったことか。肝心の身長の方は早々に止まってしまったというのに……

 小柄な身体に大きな胸がコンプレックスだったし、サイズが上がれば値段もアップするくせに、かわいいデザインのものがなくて、思春期の頃わたしはサイズの合わないブラをして胸を締めつけていた。
 だけど、それが「逆に」乳首や乳輪に刺激を与えてしまって、さらに「成長させてしまう」ことになるなんて、あのときの自分は思ってもみなかった。
(とはいえ、遺伝というか生まれつきの「体質」が一番の原因とされるが。でも、うちの母も二人の祖母も普通の乳輪の大きさだったけどね……遠い目)

「……でもさ、きみとつき合った男は、きみのそのおっぱい見てるよ。だって、一緒に旅行したんでしょ?おれなら、きみが寝ている間に布団をそっとめくって、じっくり見るね。人間って、隠されたら隠されるほど、絶対見てやろうと思うもんだしな」

 ——えええぇっ、そうだったのっ⁉︎

「きみ、そんな調子だったら……セックスもじゅうぶん愉しめないでしょう?」

 ——うっ、なんでわかる?
 確かに、見られて幻滅されたらどうしよう、という思いが心のどこかにあって、自分をさらけ出して快楽に浸ることができないでいた。

「そもそも、男の方からすれば、彼女になってセックスもしてる仲なのに、おっぱいも見せてくれないんじゃ、心を許してもらってないと思ってしまうし、もしかしたら本当は自分のことを好きじゃないのにつき合ってるんじゃないか、とまで思ってしまうね」

 ——そう、それは元カレから言われたことがある。
 もちろん全力で否定はするけど、信じてもらえなくて、やがて向こうに好きなができたとか、そんなことになってしまって、結局別れてしまうのだ。

「……やっぱ、手術するしかないのかなぁ」

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