真実(まこと)の愛

佐倉 蘭

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Chapter 6

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「と、ところで……なんで松波先生はこんなところにいるんですか?」

   麻琴はすべてをラララ星の彼方へ押しやって、無理矢理にでも話題を変えることにした。

「他人行儀だなぁー、マコッティは。僕のことは『恭介』だろ?」

   どうやら気に入ってしまったのか、松波が「マコッティ」を連発している。

「いくらなんでも、お医者様を呼び捨てになんかできません。ハードルが高過ぎます」

   麻琴は取りつく島もなく言い放った。とはいえ——「マコッティ」呼びだけ、は絶対に阻止したい。

   なので——

「……いいですよ」

   麻琴はめいっぱい妥協する決心を固めた。

「そんなどこかのティッシュみたいなヘンな呼び方をされるくらいだったら、わたしのことは呼び捨てにしてくだすって結構です。わたしも、あなたのことは『松波先生』じゃなく——『恭介さん』ってお呼びしますから」

「……わかったよ」

   松波——恭介は、言葉とは裏腹に、あまりわかってなさそうな顔で応じた。

「きみのせいで、生まれて初めて医者になったことを後悔したけどね」

——大丈夫かしら?ほんとに、わかってくれた?

   麻琴の心に一抹の不安がよぎる。

「今日は大学で講義の日だったんだ。そのあと会社に向かう途中で、ここの前を通りかかったんだよ。帰国してやっと落ち着いてきたんだけど、そろそろ『足』がないと不便になってきてね。B◯Wでもいいなって思って、ウィンドウ越しに物色してたらさ……」

   確かに、恭介には同じドイツ発祥の車でも、メル◯デスよりB◯Wが似合いそうだった。第二の故郷である英国発祥のジ◯ガーでも良さそうではあるが。

「ティールームの窓辺のテーブルで、麻琴がこの前とは違う男と密会していたんだ。それも……今度もまた左手の薬指に指輪をつけた『妻帯者』のヤツと」

   突然、どこから呼んできたのか、恭介の背後にどんよりとした暗闇が出現した。

「しかも、その妻帯者とはすっごい楽しそうに笑いながらお茶してた」

「……はぁ?」
   麻琴の口から呆れ果てた声が漏れた。

——『この前とは違う男と密会していた』なんて、人聞きの悪いっ!『その妻帯者とはすっごい楽しそうに笑いながら』って、仕事の話をしてただけなのにっ⁉︎

——そもそも、元カレと、今さらどうこうなるなんて、わたしには考えられないんですけれどもっ!

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