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Chapter 5
④
しおりを挟む——やっぱり、仕事はわたしを裏切らない。
ユニマ◯トのコーヒーを買いにリフレッシュスペースへ向かう麻琴は、しみじみと噛み締めていた。
新商品の開発に向けて、ようやく方向性が定まってきて、新しいチームがまとまり始めたからだ。
魚住に大失恋したときも、青山から一方的に別れを告げられたときも、麻琴は一心不乱になって仕事に没頭していた。
そのうちに、四六時中ズクズクッと疼いていた心の痛みが、いつの間にか時々思い出したようにズクッと痛む、という程度までになっていた。
——松波先生のことは、別にそこまで想っていたわけじゃないんだから……
きっとすぐに元どおりの自分になる、と麻琴は思った。
やはり、ここまで男運の悪い自分は、仕事に打ち込んで生きていくしかないのだ。
足取り軽くリフレッシュスペースへ向かう麻琴が、その部屋の前を通り過ぎる瞬間……
扉の向こうから、にょきっ、と腕が出てきた。麻琴の手首が、がしっ、と掴まれる。
そして、そのまま、部屋の中にずるずるずる…と引き込まれた。
麻琴はあわてて、自分の手首を掴んだ張本人を見る。
「なんで、L◯NEも通話も無視するの?」
——松波だった。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
「ぎょ…業務中なんですけどっ!」
麻琴の抵抗も虚しく、医務室のドアを閉めてロックした松波は、彼女を診療用のリクライニングチェアに座らせた。
「これも業務の一環ですよ?『渡辺』さん」
松波は医師用のチェアに座って、タブレットを操作しはじめた。
「……最近、また残業が増えてますよね?このままだと、あなたの上司に『業務改善勧告』を促すことになりますね」
「ちょ…ちょっと待ってください!」
麻琴は立ち上がりそうになった。
「今、やっと、わたしの新しいチームが軌道に乗りそうなんですっ!」
——ほんとに、それだけはマジで困るんですっ!
「それじゃあ、仕方ないですね。……僕の話、聞いてくれる?」
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