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الفصل ٧「CEOの許嫁」
②
しおりを挟む「Jamila, she's the wife I chose.」
〈ジャミーラ、彼女は私が選んだ妻だ〉
マーリク氏はあたしの腰に手を回して抱き寄せたまま、彼女——ジャミーラさんにきっぱりと告げた。
「You know she’s indeed your wife, but…」
〈そうね、確かに彼女はあなたの妻よ、でも…〉
彼がアラビア語ではなく(あたしが理解できる)英語で話してくれたので、ジャミーラさんも英語になった。
「…she’s your "third wife" .」
〈「三番目の妻」だわ〉
私はアラビア語がちんぷんかんぷんなので、ようやく話の意味が理解る。
「So I’m your "First Lady" you must choose.」
〈だったら、わたしはあなたが選ばなければならない「一番目の妻」ね〉
——理解できたのはいいけど、あたしに対する「宣戦布告」だった……
「Don't you remember that I told you I wasn't going to marry you?」
〈君とは結婚するつもりがないと言ったことを覚えてないのか?〉
「Do you know what you're doing? In our family there is no other woman of your age suitable to be your wife but me.」
〈あなたは自分のしていることをわかっているの?わたしたちの一族ではもう、あなたの妻にふさわしい年ごろの者は、わたし以外にはだれもいないのよ〉
——ジャミーラさんは、マーリク氏の『family』の女性なんだ。そういえば、ムフィードさんが『ムスリムの妻、一番目はfamilyです』って言ってたなぁ……
さらに、マーリク氏が父親から勧められた「許嫁」をすべて拒否してきた、とも言っていた。
「She'll be able to go to bed with you, but she won't be able to go to your father. Isn't that right?」
〈彼女はあなたとベッドへは行けるでしょうけど、あなたのお父さまのところへは行けないわ。そうでしょう?〉
「I will not allow you to insult her.」
〈彼女を侮辱することは、私が許さない〉
マーリク氏が絶対零度の目で睨む。視線だけで人ひとり殺めてしまいそうだ。
「Anyway,why do you think I'm wearing a suit?」
〈ねぇ、どうしてわたしがスーツ姿だと思う?〉
ジャミーラさんは、これ見よがしに着用しているスーツをあたしたちに見せる。
マーリク氏の極寒の視線を全身で浴びているにもかかわらず、彼女はいっさい怯まない。それどころか、豊かな胸をこれでもかと張っている。
きっと、防寒対策バッチリの心臓に違いない。
「I've come here today to be your secretary!」
〈わたしが今日ここに来たのは、あなたの秘書になるためよ!〉
ジャミーラさんは声高らかに宣言した。
「Huh? You've got to be kidding me. You don't have the power to decide it.」
〈は?ふざけるな。君にはそんな権限はない〉
マーリク氏は極寒の視線をますます凍らせて、彼女にきっぱりと言い放った。
「Know your place!」
〈身の程を弁えろ!〉
「Of course I know my place. I'm here on your father's orders.」
〈もちろん身の程は弁えているわ。わたしがここへ来たのは、あなたのお父さまの命令よ〉
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