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きみに指輪をあげたい
Chapter 3 ③
しおりを挟む美咲は震える指で、ある指輪を示した。
「バレリーナ・ソリテールでございますね」
店員がホッとした声で言った。
中央のダイヤモンドの四隅に小さなダイヤモンドが施されていて、アームの部分にも小さなダイヤモンドが埋め込まれていた。バレリーナの中では最高級だった。
——望むところだ。佳祐らのように一流ホテルで披露宴をするわけじゃないから、その分婚約指輪にぶっ込んでやる!
「ほら、美咲、買ってやるからつけてみろよ。先刻の結婚指輪と一緒につけてみな」
それでもまだ躊躇していたので、和哉がつけてやった。 二本の指輪は、美咲の細長い指にしっとりと収まった。まるで、彼女のために誂えたかのようなデザインに見えたほどだ。
すると、美咲が左手を照明にかざしてうっとりとし始めた。彼女の細い指には〇.五カラットの石が巨大化して見えた。さらに、脇のダイヤモンドたちが互いに共鳴し合って、指輪がキラキラを通り越してギラそギラ輝いている。
——このくらいのクラスになると、香里のあのハリー・◯ィンストンに見劣りしないかも……
それに、こんなになにかに魅了されている美咲を見る方が初めてだった。
「では、新郎様の結婚指輪はいかが致しましょう?」
——そうだ、おれのも買わないと。
和哉は美咲の結婚指輪と同じバレリーナで、カーブはしているがダイヤモンドがついていない、一番初めに美咲が見ていたデザインに決めた。
それから、指のサイズを測ったり(美咲のサイズはフランスのサイズで四五だった)結婚指輪に入れる刻印を決めたりしたあと、支払いを先刻のクレカで済ませて、さぁ帰ろう!としたとき……
美咲が口を開いた。
「……タンクMCを見せてもらえますか」
店員に時計を持ってきてもらう間、美咲が言った。
「婚約指輪のお返しだよ。……半返しで、金額的にもちょうどいいし。嫁入り道具用意しなくてもいいって言うから、代わりに和哉の時計にぶっ込むわ」
「でも、時計ならこれがあるぞ」
ボーナスほぼ二回分で購入したロ◯ックス・ディープシーを指差す。
「ディープシーだとカジュアルだから。会社関係の改まった式典や新製品の披露パーティとかにはタンクMCの方がふさわしいよ。ま、実物を一回見てよ」
そのとき、タンクMCがやってきた。
——うわーっ、ヤバい!かっこいいのに、なんか色っぽいじゃねえかよーっ⁉︎
黒の革ベルトにブラックフェイスのタイプを手にとってみる。「つけてみて」と美咲に促されて、時計をつけてみる。
——あ、革ベルトは肌にフィットして、やっぱ、いいなぁ。
「これもいただきます。……あ、この時計はこのカードでお願いします」
美咲が店員にクレジットカードを渡していた。
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