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きみに指輪をあげたい
Chapter 3 ①
しおりを挟むそして、とうとう、香里から「mission」という名のL◯NEがやってきた。
【ものすごく調べたのに、灯台下暗しだったわ。ものすごくベタで笑っちゃうわよ。でも、絶対、美咲は気に入ると思う】
早速ネットで来店予約を入れて、和哉と美咲はその店を訪れた。
その店の名前は……
……って、タメるほどのものではないのだが。
香里のミッションで訪れた店は、どんなカップルも買わない(買えない?)けど一応見ておくか、と思ってしまうくらいの、今や婚約指輪&結婚指輪の大定番「カ◯ティエ」だった。
ところで……確か、バブル期には「カ◯チェ」と言っていたのに、いつから「カ◯ティエ」になったのだろう?……どうだっていいことだが。
確かにベタだけど、前の「ティ◯ァニー」に匹敵する店だし(むしろ、カ◯ティエの方がちょっと斜め上って感じ?)
——さすが、かおりんチョイス!
と、美咲は思った。
が……果たして、美咲の極端に華奢な指に合う指輪は見つかるのか……⁉︎
で、ここから先は、香里から和哉だけに与えられた「秘密のcommand」である。そして、和哉はそのコマンドを実行した。
……いや、店員にこう告げただけですけどね。
「プラチナの『バレリーナ』、見せてください」
しかし、あっさりと美咲がミッション外のことをつけ加えた。
「結婚指輪だけでいいです」
店員が「バレリーナ」と名のついた結婚指輪をいくつか持ってきた。 バレエが趣味の美咲にぴったりなネーミングだ。
美咲がカーブしたタイプをつけてみたい、と言って、まずは一番プレーンなタイプのものを試着する。ものすごく指の細い美咲では、その店舗にあった一番小さなサイズでもぐるぐる回ったが、指輪の幅が細めなため、華奢な美咲の指にも違和感なく似合っていた。細長い美咲の指がますます細く長く見えた。
「……これでいいや」
美咲は夢見る少女のような風貌を裏切って、男前にも即決しようとする。
——おい、美咲、店に入って何分だ?一生モノだぞ? 店員も唖然としてるぞ?
「美咲、ダイヤはついてなくていいのか?香里ちゃんのはずらーっと一周ついてたぞ?」
和哉が堪らず口を出す。
「フルエタニティはサイズ直しができないから、不便なんだよ」
「それでしたら、こちらのようなハーフエタニティもございますよ」
店員が半周だけダイヤモンドのあるタイプを見せた。
美咲がそれをつけてみる。さすがに、こちらの方が豪華で見栄えがいい。
「ダイヤモンドがあるところはアームに傷がつきにくくていいんですよ。結婚指輪は毎日つけるものですから、傷が結構つくんですよ」
店員が説明する。
美咲が上目遣いで、いい?と和哉に問うた。
——美咲、かわいすぎるぞっ!
もちろん、和哉は肯いた。
美咲はうれしそうに微笑んだ。やっぱり、プレーンなのを選ぼうとしていたのは、遠慮していたからだ。
その姿を見て、和哉は香里からのもう一つのコマンドを実行した。
「……婚約指輪も見せてください。もちろん『バレリーナ』で」
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