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きみに指輪をあげたい

Chapter 2 ③

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「なにもらったの?」
 再度、香里が尋ねる。
「ティ◯ァニー・セッティング」
 美咲が答えた。
「でも、一粒石の立て爪っていかにも『婚約指輪』って感じでほとんどつける機会なかったなぁ。……家を出るときに置いてきたけど」
 確かに香里の婚約指輪なら、婚約指輪であってもデザイン性があるから、却ってファッションリング感覚でいろんな場所にして行きやすい。

 そのとき……香里の眉間にシワが寄った。

 どうせ、和哉には指輪のことなんてわからないから、自分にアドバイスを求めてくるだろうと思って、どのブランドが美咲にいいか考えていたのだ。そして、美咲の極端に華奢な指に合うブランドは、ちょっとティ◯ァニーしか考えられないのだ。
 ——二度目も同じブランドはまずいよね?

 ところが、美咲は言った。
「あたし、結婚指輪だけでいいよ。婚約指輪はもういらない」
 
   彼女は豆乳入りの抹茶ラテを、まるで悟りの境地のような風情で飲んだ。


 ゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜


 和哉は指輪のことなんて、まったくわかっていなかった。「男子あるある」の典型で、婚約指輪と結婚指輪の違いさえ知らなかった。

 なので、親友の妻・香里に丸投げ——じゃなくて「アドバイス」してもらうことにした。なにせ、香里の左手薬指には度肝を抜かれるほどギラギラ光った指輪が君臨している。目は確かであろう。
 ——だけど、外国であんなのしてたら、手首ごと持ってかれるなー。

 そこまでは無理としても、愛する美咲のためなら、奮発するつもりだ。神社での挙式はリーズナブルだし、友達を集めて行うウェディングパーティはレストランで会費制ですることになったから、余裕はある。
 ちなみにパーティを取り仕切るのも、それぞれの「親友」である新田夫妻だ。佳祐はめんどくさそうだったが、香里の気合いの入れようは半端ない。

 ——そのパーティで美咲は生まれて「初めて」のウェディングドレスを着るのだ~♪
 この件では美咲より、和哉の方が浮かれていた。

 そんなわけで、適材適所、適地適作(?)ということで、結婚に関することは香里にリサーチしてもらっていてL◯NE待ちの状態だった。

 肝心の美咲は『かおりんセンスいいから楽しみー、でも、忙しいと思うから、いつでもいいよー』などと悠長なことを言っていた。
   ところが、和哉が『おれも結婚指輪するようになったら、女の子が寄って来なくなるなー』と言えば……

 突然、『かおりんのL◯NEまだかなー』と言い始めて、指輪に関しては自分でもタブレットでいろいろ調べるようになった。

 ——いい傾向と対策だ。

 和哉は、ほくそ笑んだ。

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