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きみに指輪をあげたい
Chapter 2 ①
しおりを挟む「……で、おまえら、結婚式どうすんの?」
能天気な佳祐がアイスコーヒーにミルクを注ぎながら訊いた。
「……そういうの、もういいかな、と思って」
再婚になる美咲が言った。
「うちの両親も来そうにないし」
前の結婚も反対を押し切ったにもかかわらず離婚してしまい、今度は再婚禁止期間が明けたらすぐに入籍しようとしているので……いや、美咲自身は来年の三月半ばの自分の誕生日あたりがいいかなと思っていたのだが、和哉が到底待てなかった。
美咲は実家とは絶縁状態になっていた。 両親がとにかく会ってくれないのだ。これでは、さすがの和哉の伝家の宝刀「最敬礼」も抜けぬままになっている。
和哉の方は離婚しているので、父親には連絡だけして母親とだけ会った。彼女は再婚経験者なので、事情はすぐに察してもらえた。
「前のときはどんな結婚式だったの?やっぱり豪華にしたの?」
香里が尋ねてきた。
「結婚式やってないの。向こうが再婚だったし、別にいいかな、って思って。写真くらいは、って思ったけど、結局それも撮らなかったなー」
美咲が遠い目をしながら答えた。
「……じゃあ、美咲、おまえ、ウェディングドレス着たことないのか?」
和哉が訊いた。心なしか頬に赤みが差してきた。
美咲が肯いた。
「……じゃあ、美咲、おまえ、前の結婚は神に誓ってないんだな⁉︎」
和哉が訊いた。頬がはっきりと紅潮している。
美咲が肯いた。
「美咲、おまえ、おれとの結婚が初婚じゃないかぁーっ!」
和哉が叫んだ。
「……いやいやいや、それは違うでしょう」
佳祐がツッコミを入れた。
「おれは決めた!結婚式をするっ!美咲はおれのために、いや、おれだけのために、ウェディングドレスを着て、ちゃんと神に誓って、今度こそ『本当の結婚』をするんだっ!」
和哉は宣言した。
「恋する男がなんかめんどくせぇこと、言い出したぞ……」
佳祐がげんなりした顔をする。
「でも、あたし、それだったら……」
美咲は思いを巡らす。
「同じ神様でも、馴染みのないキリスト教の神様じゃなく、神社の神さんがいいなぁ」
美咲は、どうせだったら自分と和哉が生まれて育った地にある神社で……二人きりで式を挙げたい、と思った。
お宮参りも、七五三も、成人式も、お世話になった神社だ。「ちゃんとした結婚」を、というのなら、結婚式もお世話になるのが筋ではないだろうか。
美咲がそう説明すると、和哉は肯いた。
——美咲が望むことを叶えてやろう。
それに、神社も悪くない。なぜなら、美咲の文金高島田の綿帽子に打ち掛け姿、絶対に最高に似合うだろうから……
そして、美咲がその神社の名前を告げると、
「うわーっ、何そこ、江◯さんが推奨している超パワースポットの神社じゃない!日本で一番古いって言われてるとこでしょ?ずるいわ、美咲。一人でしあわせになる気?あたしもしあわせになるために行きたいわ~っ!」
香里が身悶え始めた。
「……おい、香里。おまえ、しあわせじゃないのか?……新婚なのに」
佳祐が横目で睨んでいた。
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