あなたの運命の人に逢わせてあげます

佐倉 蘭

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きみに指輪をあげたい

Chapter 1

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 ある土曜日の昼下がり。やたらと目を惹く四人の男女が、大通りを歩いていた。

 男二人の身長は一八〇センチほどあって、片方のクールでシャープな雰囲気の魚住うおずみ 和哉かずやは今流行はやりの塩顔で、もう片方の新田にった 佳祐けいすけは人懐っこい笑顔が魅力的な王子様系のイケメンである。

 佳祐の隣では、意志の強さが表情に現れた華やかな美女、妻の新田 香里かおりが十センチ以上のピンヒールで颯爽と歩いている。
   彼らはこの六月に結婚したばかりだ。

 和哉の隣では、まだあどけない少女の面影を残した可憐な美人の岡嶋おかじま 美咲みさきが十センチほどのウェッジソールのサンダルで歩いている。
   彼女はつい先日前夫と離婚したばかりだ。

 その離婚原因である不貞行為をおこなった和哉が先刻さっきから美咲の隙をついて、彼女の額や頬や顳顬こめかみなどに、何気ない調子で軽くキスしている。もちろん、公衆の面前で、だ。

「……和哉、おまえ、そんなキャラだったっけ?」 
 佳祐は、高校時代からの親友に訊いた。

「あ、和哉は小学生の頃からこんな感じだから……」
 代わりに美咲が呆れた声で答えた。彼女は人前ではやめてほしそうな口ぶりだった。

   和哉と美咲は同じ小学校に通っていた。
 美咲によると、放課後はもちろんのこと、先生のいない自習ともなれば、たとえ授業中であっても和哉がいつの間にか隣の席に陣取り、隙をついては彼女にキスしていたらしい。

  ——おまえら、どんな小学生やねん⁉︎
 東京で生まれ育った佳祐が、関西で生まれ中学まで育った和哉が聞くと「寒イボが立つ」発音で、心の中でつぶやく。

「口にはしてないさ。ガマンしてるからな」
 そんなことも知らず、和哉はいけしゃあしゃあと言った。

 香里は理不尽だった。
 ——なんで新婚の自分たちより、和哉と美咲の方がラブラブなんだろう……?

 佳祐は人見知りせず、だれとでもすぐに打ち解けてしゃべるから、一見チャラく見られるが、意外にも恋人に対しては淡白だ。もちろん、夜はガンバってくれるけど、昼間は恋人も友達も同じ扱いだ。恋人であろうと友達であろうと「平等」なのだ。人前でいちゃついたりするなんてことは決してない。その点は、和哉よりずっと佳祐の方が「硬派」だった。

 ——「彼女」を卒業して「妻」になったけど、それって「家族」になった、っていうことで、なんか、これからより一層「友達」に近くなるってことなんじゃないだろうか……?
 香里の表情が曇った。

「かおりん、疲れちゃった?」 
 美咲が香里の表情に気づいた。
「あたしも、ちょっと疲れちゃったから、お茶しよ?」

 ちょうど、大通りに面したカフェが目についたので、そこのオープンテラスのテーブルに四人で着く。

 和哉と佳祐はカフェでの「男子の定番」アイスコーヒー、香里はカフェラテ、美咲は豆乳に差し替えた抹茶ラテをオーダーした。

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