あなたの運命の人に逢わせてあげます

佐倉 蘭

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あなたの運命の人に逢わせてあげます

Chapter 5 ②

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 人見知りが激しくて引っ込み思案な彼女だが、それでも親しい友人ができると、もともと持つ芯の強さも手伝ってだんだんと活動的になってきた。

 高学年になると、よく通る高い澄んだ声が買われて、クラス代表で朗読したり、市の催しの劇に参加したりするようになった。
 それにともなって、男子連中から熱い目で見られ始めるようになる。


゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜


 修学旅行の夜、児童会長のおれは行く先々で代表として人前で挨拶をし、気疲れしてやたら眠たかった。だから、おれだけはとっとと布団をかぶって熟睡する体勢に入っていた。

 すると、クラスメイトたちが「好きな女の子」の名前を告白しだした。彼女の名前もちらほら「発表」され、胸がムカムカしてきた。

 友人のひとりが「次はおまえの番だぞ」と言って布団をめくった。

   おれは当然、彼女の名前を告げた。そして、
『……大人になったら、結婚するつもりだから』
ときっぱり言い切り、布団をすっぽりかぶった。

 クラスメイトたちから歓声が上がる。

 おれは布団をめくって顔を出し、
『おまえら、あいつには言うなよ。大人になったら、おれが自分でちゃんと言うから』
 そうつけ加えて、また布団をすっぽりかぶった。

 おれの彼女への想いは、ほかのヤツらとは違うんだということを見せつけてやりたかった。そして、今度こそ熟睡した。


 次の朝、クラスを超えておれと彼女のことが話題の中心となり、騒然となっていた。

 てっきり、昨夜おれがあんなことを口走ったからだと思っていたが、それだけではなかった。
 実は、女子の方でも同じ「儀式」が行われていて、彼女が告げたのはおれの名前だった。

 低学年のころと比べるとずいぶん話しやすい雰囲気になった彼女だが、それでもおれの名前を引き出すまで女子たちはずいぶんと苦労したらしい。「律儀」な女子たちは、全員がちゃんと「発表」しないと、とても眠れる雰囲気じゃなく、彼女は仕方なく「口を割った」みたいだ。


 修学旅行が終わると、おれと彼女はみんなから「夫婦」扱いされるようになった。彼女はおれの名字やニックネーム、時には「奥さん」と呼ばれた。

 そう呼ばれた彼女は頬を赤くしながらも、自分をそう呼んだ相手を強い目で睨み返していたが、文句は言わなかった。

 友人たちからは「両思いでいいよなー」とうらやましがられたが、まだ小学生の身ではなにをどうしていいのかわからない。


゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜


 おれたちは思春期に入りつつあった。

 おれは変声期で時々声が引っくり返り、ぐんぐん背が伸びていた。彼女は相変わらず小柄だったが、身体からだの線に丸みを帯び、ふとした仕草がしなやかになってきた。

 そして、卒業式を迎える。
 答辞を読むおれには、小学校を去る感慨など一切なかった。

 中学校に入学したら——
 近所に住む中学生たちのように、学校から一緒に帰ったり、休日に映画や遊園地に行ったり、そういうことを彼女としようと思っていた。

 ——だが、別れというものは、突然やってくるものだ。

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