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あなたの運命の人に逢わせてあげます
Chapter 4
しおりを挟む届いたのはウェブメールではなく、通信会社のメルアドのものだったのだ。
だが、しかし、今はそんなことは言ってられない。とにかく一刻も早く、変更になった場所へ向かうしかない。
新しい指定先は、インド料理のレストランだった。メールには、最近この駅周辺の再開発でできたタワービルの名と階数もあって、どうやらそこにあるらしい。このビルだと、確か先刻までいたカフェからは、駅をはさんで反対側のはず……
おれは、最短距離で突っ切るために連絡通路へ走った。
ところが、駅に直結するデパートの建て替え工事にともなって、通行止めになっているじゃないか。
「……くそっ!」
すぐさま踵を返し、駅の周囲をぐるっと回る迂回路を駆け出した。こんなに真剣に走ったのは何年ぶりだろう。
タワービルに飛び込んだおれは、建物の奥のエレベーターへ突き進み、▲のボタンを押した。息が上がり、肩が上下していた。エレベーターというヤツは、急ぐときに限って、なかなかやってこないものだ。おれは▲のボタンを押しまくってやりたい衝動を必死で抑えた。それでも、やっと箱が下りてきて乗り込むことができた。
超高層のタワービルとは言え、インド料理店が入っている階はビルの中層階だったので、ホッと一安心した。
だが、それもつかの間、エレベーターは律儀にも各階に止まっていくじゃないか。当然のことながら、出入りする人たちが止まないと扉が閉まらないので、待っている間、イライラが限界に達しそうになった。腕時計を見ると、指定された時間より十五分近く遅れていた。
ようやく、おれが降りる階へ着いて扉が開いた。扉のそばに陣取っていたおれは、転がるように飛び出し、左右を見渡した。
そこはレストラン街だった。
どっちの方向にあるかわからないが、とりあえずメールで指示されたインド料理のレストランを探す。
そして、その店が見つかり、とうとう扉の前に立った。
——この中に、おれの「運命の相手」がいるかもしれないのか……
店の扉を開けて、その中へ足を踏み入れた。
インド人らしき男の店員が大きな声で挨拶した。
「いらっしゃいませー」
しかし、すぐにすまなそうな顔をして、
「今、ランチタイム、いっぱいねー」
と言った。
店の中を見渡すと、なるほどテーブルはすべて埋まっていた。
「……まいったな」
おれは途方に暮れた。
それは、テーブルが満席だったからだけではない。この店の中のどこに、おれの「運命の相手」がいるのか、皆目わからなかったからだ。
メールにはこの店の場所しか記されてなかった。友人はそこに元カノがいたからよかったものの、おれはいったい、どうやってこの中から見つけ出せっていうんだ。
そして、苦笑した。いつの間にか、ここに来さえすれば「運命の相手」に会えそうな気がしていた自分に気づいた。
一気にバカバカしくなった。おれはいい歳にもなって、いったいなにをしているんだろう。
——時間のムダだ。帰ろう。
おれは振り返って、入ってきた扉に手をかけようとした。
そのとき、視線の端をなにかがかすめた。
おれは身を戻した。自分でも、目が見開いていくのがわかった。
まさか——
テーブル席に座って、一人でカレーを食べていた女が顔を上げた。
その女の目も、みるみるうちに開いていった。
どこのどいつが教えてくれてるのか知らねえが……
「……なかなか痛いところを突いてきやがる」
おれは思わずつぶやいた。
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