2 / 37
あなたの運命の人に逢わせてあげます
Prologue ②
しおりを挟むある夜、佳祐がビールを飲みながらタブレットでネットサーフィンして、あちこち彷徨っていたら、
【あなたの運命の人に逢わせてあげます】
という奇妙なサイトに迷い込んだ。
怪しいと思いつつも、酒も入っていい調子だったので、遊びがてら申し込んでみた。どうせ、新手の風俗だろうと思っていた。
朝起きると、スマホにメールが来ていて「運命の人に会える日時と場所」が記されていた。
確か、ウェブメールのアドレスは知らせてもスマホの方はLINEのIDはもちろんメルアドも知らせてなかったはずだが、と訝しげに思ったが、酔っていたから覚えていないのだろう、とさほど気に留めなかった。それより、「紹介料」といってとてつもない金を要求されたらどうしようと、そちらの方が気になった。
そして、その日がやってきた。
行こうかどうしようか、相当迷ったが、結局好奇心には勝てず、佳祐はその場所へ向かった。
そこにいたのが——元カノの長澤 香里だったのだ。
佳祐はもともと香里のことを諦めきれなかったこともあって、「運命」を感じた。
——おれの「運命の相手」はこいつだったんだ、と……
それから、香里に過去の過ちを謝りたおし、もう一度やり直したいと拝みたおし、最終的に結婚する運びまで至ったのだった。
゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜
ここまで話を聞いたおれは、
「言いたかないけど。……香里ちゃんにしてやられたんじゃね?」
と、つぶやいた。
「おまえ、スマホのメルアド、ずーっと変えてねえじゃん」
すると、佳祐はスマホの向こうでフッと笑った。
『じゃあ、香里が「あなたの運命の人に逢わせてあげます」ってサイトを開設してるっていうのかよ。仮にそうだとしても、おれがそのサイトに迷い込んだのはまったくの偶然だぜ』
佳祐にそう言われて、おれは眉間にシワを寄せた。
「で、紹介料は?いくら払ったんだ?」
おれがそう尋ねると、
『それが、タダなんだ……っていうか、メールが来たのは結局、あのときのたった一回だけだったからさ』
佳祐は腑に落ちない様子で答えた。
おれはますます香里が怪しい、と思った。
オンナってのは普段はおしゃべりなくせに、そういうことにかけては口が堅いからな。まともに訊いたところで決して口を割らないだろう。文字どおり「おめでたい」佳祐にはわからないだろうが……
おれのそういう気配を察したのか、佳祐はありえないことを言いだした。
『和哉……おまえ、自分もやってみればいいじゃん』
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
【完結】この胸が痛むのは
Mimi
恋愛
「アグネス嬢なら」
彼がそう言ったので。
私は縁組をお受けすることにしました。
そのひとは、亡くなった姉の恋人だった方でした。
亡き姉クラリスと婚約間近だった第三王子アシュフォード殿下。
殿下と出会ったのは私が先でしたのに。
幼い私をきっかけに、顔を合わせた姉に殿下は恋をしたのです……
姉が亡くなって7年。
政略婚を拒否したい王弟アシュフォードが
『彼女なら結婚してもいい』と、指名したのが最愛のひとクラリスの妹アグネスだった。
亡くなった恋人と同い年になり、彼女の面影をまとうアグネスに、アシュフォードは……
*****
サイドストーリー
『この胸に抱えたものは』全13話も公開しています。
こちらの結末ネタバレを含んだ内容です。
読了後にお立ち寄りいただけましたら、幸いです
* 他サイトで公開しています。
どうぞよろしくお願い致します。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を
澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。
そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。
だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。
そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる