あなたの運命の人に逢わせてあげます

佐倉 蘭

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あなたの運命の人に逢わせてあげます

Chapter 1

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 佳祐からは「あなたの運命の人に逢わせてあげます」サイトのURLは教えてもらっていた。

 だが、営業のヤツらと組んだ絶対通したい新商品の販促のプレゼンに賭けていたので、しばらく放置状態だった。それがどうやら手応えありそうだという話を上司から聞き、テンションが上がったおれは、一人暮らしの部屋に帰ってからノートPCを立ち上げてそのサイトを覗いてみることにした。
 佳祐からは【どうなった?】というLINEが今日もあった。

 青い空に白い雲が浮かぶ画像がバックのそのサイトは、一見さわやか系だ。
 例えば、漆黒だとか宇宙の星々だとかを背景にした、おどろおどろしい感じのサイトだろうと予想していたので、ちょっと拍子抜けした。

 しかし——


【……太古の昔、人間は男と女が一つの身体からだでした。
 強さと優しさを兼ね備えた完全な身体の人間は、やがてすべての生物の頂点に立つ、世界の覇者となります。
 ところが、だんだんと人間は過信に陥り、自らを神と呼び、おごり高ぶるようになりました。
 しかし、それが神の逆鱗に触れ、罰として、とうとう身体を男と女の二つに引き裂かれてしまいました。
 以後、人間は引き裂かれた相手を求めて、何度も何度も生まれ変わるようになります。
 あなたはその相手に会えるときまで、これからも何度も生まれ変わるつもりですか?
 あなたは一刻も早くその相手に会いたいと思いませんか?
 わたしたちがあなたをその「運命の相手」に導きます……】


 ——とうたわれた「誘い文句」はどう見ても怪しい。
 ダーウィンの「進化論」を思いっきり無視してるし、「神」とか出ていて、やっぱなんか宗教が関わっていそうだ。

 だが、「運命の人に会わせる」なんて突拍子もないことを、妙に自信ありげに書いているところが気にかかった。「詐欺師」なんてのはそんなものなのかもしれないが。

 逡巡しゅんじゅんしたが、おれの指は申し込みに必要な項目を入力していた。
 一応、佳祐が「成功」しているし、この程度の相手なら、たとえトラブってもなんとかなるだろう、と踏んだ。

 メルアドはPCのウェブメールの方だけで、スマホの方は登録しなかった。もちろん、LINEのIDなんて絶対に教えない。さらに、登録したウェブメールもネット通販で使ってる方ではなく、なにかの折に入手したのだが結局使うこともなく休眠状態になっているものだ。スマホに連携させてないから、スマホからメールを開けるときはサイトを呼び出していちいちログインしなければならない。

 酔っ払っていたため記憶が曖昧な佳祐と違って、おれは素面しらふでこれらの手続きをおこなった。「送信」ボタンをクリックするときは、さすがに少し、緊張した。


 ゜゜・*:.。. .。.:*・゜゜・*:.。. .。.:*・゜


 翌朝、仕事が休みの土曜日であるにもかかわらず、えらく早い時間に目覚めたおれは、真っ先にスマホへ手をのばした。どこからもメールは届いていなかった。

「……やっぱ、佳祐のやつ、スマホのメルアドも登録してやがったんだ」
 おれは寝起きの不機嫌な声で一人ごちた。

 寝ぼけまなこのままノートPCを立ち上げると、受信箱に一通メールが届いていた。

——「あなたの運命の人に逢わせてあげます」サイトからだった。

 そして、そこには「運命の人に会える日時と場所」が記されてあった。

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