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しあわせな朝【Bonus Track】
♡×5
しおりを挟む不思議なことに……
稍が会社で仕事の真っ最中であってもおかまいなしに、もごっ、とか、ぼごっ、とか動くお腹の中の赤ちゃんが……こんなふうに「パパ」と「ママ」が「仲良く」しているときに限って、うんともすんとも動かない。
——いやいやいや。むしろ、ちょっとばかり動いてくれはった方が、「理由」になって助かるんやけれども。
しかし、いくら稍がそう思ったとしても、お腹の赤ちゃんは、どうやら「ママ」より「パパ」の味方らしい。ひたすら「お利口さん」に、息を潜めてじっとしてくれている。
妊娠が判ってからの悪阻では、吐いても吐いても胸底から込み上がってくる吐き気に、稍は「この世の地獄」を味わった。
なのに、安定期を迎えてすっかり吐き気を催さなくなった今、そんな「地獄」だった日々をすっかり、けろっ、と忘れている。それが「母親」というものなのだろう。
打って変わって食欲は全開で、食べても食べてもお腹が空く。体重計が超怖い。
今までさしてダイエットせずとも体型を維持してきた稍だが、お腹の子どもだけでなく、身体全体が着々と「育って」きている。
それでなくても「高齢出産」の域に入るのだ。なのに、母子手帳の体重を示す折れ線グラフは、稍の手によって日々「上方修正」されている。
今度の検診では、医師や看護師から超叱られるかもしれない。
——智くんが、これを知ったら絶対、体重制限に「腕まくり」してきはるわ。
ストイックな智史は、相変わらず毎朝のジョギングを欠かさず、体型維持に努めている。稍とゆっくり朝を過ごす今日みたいな日には、必ず夜に走っていた。
——なんとしても、検診には一人で行かなあかん。
「……稍、大丈夫か?」
智史が心配そうに稍の顔を覗き込む。
ぼんやりと考えごとをしていた稍が、ハッと我に返った。
だが、突然、声をかけられたからではない。
「……えっ…ちょ、ちょっと……智くん?」
智史の指が、いつの間にか——あらぬところを這っていたからだ。
——おのれっ、人がぼぉーっと考えごとしてるうちに、どこ触っとるねんっ⁉︎
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