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しあわせな朝【Bonus Track】
♡×2
しおりを挟む不意打ちで、しかも半強制的に目を覚まさせられた青山 稍は、抱きしめられたまま身をよじって、なんとか反転した。
そして、向かい合った夫に対して、大声で「抗議」したのだ。
だが、しかし——
「……稍、おはよう」
という声とともに、すぐさま彼のくちびるで彼女のくちびるは塞がれた。
「……うっ……んっ……ちょっ……ぃやっ……」
稍の更なる「抗議」虚しく……というか、却ってその甘い声が「呼び水」となり、重ねられた互いのくちびるは離れることなく……
さらに、稍が息継ぎをするために微かに開いた隙間を突いて、智史の舌が稍の咥内へ入り込み……
そうなるともう止まることなく、それからしばらくは、互いの舌を思うぞんぶん、からめ合う羽目に陥ってしまった。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
「……もおっ、いきなり信じられへんねんけどっ!」
起き抜けに、呼吸を封じ込められるような時間を過ごさせられた稍は、ものすごく怒っていた。
「おまえも、気持ちよさそうにしてたやんけ」
智史は意に返さず、いけしゃあしゃあとそう言って、稍の羽毛布団とブランケットを同時に捲った。「続き」をしようと思ったからだ。
「ぎゃあああぁーーっ!」
だが、稍が色気のない悲鳴をあげたので中断される。
「な…なによっ、これっ⁉︎」
パジャマの胸元がすっかりはだけて、夫のお気に入りの形の良い両胸があらわになっていた。
しかし、彼女が驚いたのはそんなことではない。
稍の首元から鎖骨、そして両方の胸、さらには腹部にいたるまで、見事なまでの真っ赤な「花」が咲き誇っていたからである。
すべては、昨夜の「智史の犯行」だった。
「絶対につけやんといてって、あんなけ言うたのに……っ⁉︎」
稍は朝っぱらから泣きそうだった。
「それでなくても、この前先生から、『青山さん、いくら安定期に入ったからと言っても、ほどほどにしてね』って、生温かい目で言われてんからなっ!」
診療予約は明後日だというのに、あのときよりも今の方が、それらは稍の真っ白な肌にはっきりくっきり色づいていた。
「こんなカラダ……恥ずかしすぎて、定期検診で先生に見せられへんっ!」
「なんでや?女医さんやから、別にええやろ?」
智史はこともなげに言う。
——そんな問題と違うっ!
数ヶ月前、稍の月経が遅れていたため「もしかして」と思って妊娠検査薬で調べると、めでたくその「印」が出た。
そして、産婦人科へ行かなくては!となったのだが、そのとき突然智史が、
『男の医師が、稍の内診をするなんて気が狂う。絶対にあかん』
と、超めんどくさいことを言い出した。
そこで、思いがけない出来事から知り合いになった医師の松波 恭介に、彼が勤務するお台場の総合病院の産婦人科の女医を紹介してもらった。
彼は今、二人が勤務する(株)ステーショナリーネットの非常勤の産業医でもある。
『うちにもそろそろ産業医が要るでしょう?
おもしろい医者がいますよ』
智史が松波医師を社長の葛城 謙二に紹介すると、彼らは同じ中高一貫男子校の先輩・後輩だったことが判明した。いわゆる「御三家」の一角を占める超名門校だ。
「世間はどこでつながっているかわからないほど狭い」と、青山夫妻は思った。
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