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きみは運命の人
§ 8 ②
しおりを挟む「えっ、おまえ、ややちゃんとは、すでに出会ってるやないか。どうやって、彼女が『運命の相手』やってわかったんや?」
和哉が訝しげな顔になる。
「説明なんて、できませんよ。『それが不思議なことに、逢うたら、すぐにわかる』って言わはったんは和哉さんでしょ?まさに、そのとおりでしたよ」
それを言われると、和哉はなにも言えない。
「とにかく、おれの『運命の相手』は稍やったわけですから、もう文句ないでしょう?和哉さんには協力してもらいますからね。……では、稍がこの会社に嘱託社員として入社して、さらに『麻生』の姓で働く件、よろしくお願いしますよ?」
念には念を入れて、「魚住課長」からも人事部長にプッシュしてもらおう。
——絶対にしくじるわけにはいかへんからな。
実は先日、創立パーティで会った社長に直談判し、快く承諾してもらっていた。
社長からは、『なんだ、そんな相手がいるんだったら、なぜもっと早く言わないんだ?』と逆に咎められたくらいだ。
社長の葛城とその妻の誓子ともども、彼らの知人の令嬢との「見合い話」を持ちかけられていたからだ。
しかし、『これで、君がすぐにでも情報システム課に異動してくれたら言うことないんだがな』とも言われたが。
万事うまくいって、GW明けに「稍」が入社したら……
——パーティで「稍」を見つけて魅入っていた山口が、もしかしたらチョッカイを出しに来るかもしれへんな。
智史の「計画」では、GWに神戸へ戻り婚姻届を提出することになっていた。五月半ばの自分の誕生日には、晴れて妻帯者になっているはずだ。
——ま、ちゃんと結婚したあとなら大丈夫やろ。それに、「八木」と「稍」が同一人物やと見分けられへんヤツに、なにができるっちゅうねん。
そして、六月の稍の誕生日の頃に、結婚披露パーティを開くのだ。
親友の小笠原が『日もあらへんちゅうのに、大型連休が痛いなぁ』とグチりながらも、伝手を頼って準備してくれている。
『いくら「サプライズ」とはいえ、ウェディングドレスのサイズ調整もあるし、早よ、ややちゃんに会わせろよっ』と、うるさい。
——あいつは調子に乗って、ぽろっ、と言うてしまいそうなところがあるからな。そしたら「計画」が台無しや。
智史は小笠原に『サプライズにしたいから、稍とはギリギリまで会わせられへん』と言っていた。
——稍に婚姻届を書かせて、ヤツのデパートへ一緒に指輪を買いに行くまでは、会わせるわけにはいかへん。
「……智史」
改まった声で、和哉に呼びかけられる。
「あのサイトはな、確かに『運命の相手』は教えてくれるけどな」
智史は怪訝な顔で、従兄を見た。
「せやからと言うて、必ず『運命の相手』と結ばれる、ってわけやないんや」
ほんの一瞬だが、和哉の表情に美咲が離婚して自分と結婚するまでの「苦悩」が浮かんだ。
——稍をこの手にできるんやったら、おれは……なんだってする。
智史はしっかりと肯いた。
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