契約結婚はつたない恋の約束⁉︎

佐倉 蘭

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Chapter 5

対峙 ⑦

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「 くだんの封建的な旧民法ですら、婚姻関係を解消することが認められていました。もともと婚姻制度は永久不変のものではないということです。
   最近では離婚に否定的だったカトリックの国でも緩和されるようになり、例えばフランスでは、婚姻関係ではなくPACSというパートナー制度を利用することで容易になりました。でも……」

   栞はそこで、ちょっと首をかしげた。

「あの人らは逆に、婚姻関係を守ろうとしはったんですよね?……あたしが生まれても離婚しいひんかった、っていうことは……」

   栞はさらに続ける。

「それは互いの配偶者のためやなくて、姉と『お兄さん』のためやったんやと、あたしは思うんですけど。二人に対する、せめてもの——『償い』のつもりやったんやないんでしょうか?
   まぁ……それこそあまりにも勝手すぎるし、姉たちにとっては大きなお世話でしょうけどね」

   ここまで、たくさんしゃべって喉が渇いた栞は、ローテーブルのフ◯ンフランのイニシャルマグを手に取り、ごくごくっ…と飲んだ。
   「父の味」だというカフェオレは、当然のことながら冷め切っていた。

   そして、改めて口を開く。

   栞自身にとっての「本題」は、実はここからなのだ。長々としゃべってきたのはそのための「布石」でしかない。

「——そもそも、なんであたしが生まれる羽目になったんでしょうか?」

   しかしその問いは、登茂子が口を開く間もなく、栞自身によって答えられた。


「それは——あたしが生まれる前からすでに、互いの家庭がとっくに破綻していたからやと思うんですけど」

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