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Chapter 3
告解 ③
しおりを挟む——というわけで。
神宮寺の腕に包まれた心地よさの中で、栞はこの状態をいつまでも享受するにはこれから自分はどのようにすべきかを、前向きに考察してみることにした。
幸い、物事について「考察する」ということに関しては、得意な方だ。
——とりあえず、明日の朝起きたら、気張って朝ごはんをつくるところからやろか?
今まで自分のできる範囲で「京のお晚菜」をつくってきて、なんとか神宮寺の胃袋は掴めてはいるようだが「料理」というのは奥深いものだ。
——たっくんはお子ちゃまが好きな洋食系も、食が進まはるからなぁ。それに、中華系も食べはるのに、あんましつくってなかったなぁ。
まだまだ「改善」の余地はある。
「よしっ、朝起きたら、神戸の北◯ホテルも真っ青になるくらいの豪華な朝食をつくるえっ!」
栞は無謀にも生まれた土地の「世界で一番美味しい朝食」を「仮想敵」にして、心の中で握り拳をつくった。
そして自分を抱きしめながら、いつの間にか眠ってしまった神宮寺を見る。まだ微かに少年の面影が残る寝顔だった。
こうして見てみると、やはり五歳も違う「歳下」なのだな、としみじみ感じた。
「……たっくん……かわいすぎる……」
栞は神宮寺の唇に、ちゅ、とキスをした。自分からだれかにくちづけをしたのは、これが初めてだ。
神宮寺は栞から、あらゆる「初めて」を奪っていった。
゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚・*:.。. .。.:*・゜゚
だが、翌朝、そんな栞の決意は無残にも崩れ去った。
「たっくん!放して……っ!あたしに朝ごはんをつくらして……っ‼︎」
神宮寺の書斎の奥にあるベッドルームでは、栞の叫び声がこだましていた。
「そんなの、テキトーでいいからさ。それより、おれが——栞を喰いたい」
朝から——と言っても、すでに「おはよう」と挨拶できる時間ではないが——色気をダダ漏れさせた神宮寺が、栞の耳元でささやく。
「あかん……あかんって……あたしには……たっくんのために……絶対にやらなあかんことが……」
このままでは、この未明に栞が計画を練った「たっくんをいつまでもつなぎ留める作戦」の第一弾が遂行できない。
——あたしはなんとしても一階のキッチンに行かなあかんのに……っ!
栞は全力で身を捩った。初っ端から「不発弾」にさせるわけにはいかないのだ。
「なんだ、その京都弁……?栞、おれを煽ってるのか?」
だが、しかし……
神宮寺の目に情欲の炎を煌々と灯らせてしまった。万事休す、である。
そのとき突然、ベッドサイドに置いていた栞のスマホがヴヴヴッと鳴った。
ほんの一瞬だけ、神宮寺の気がそっちに逸れた。
これ幸いと栞はその隙を突いて、ダイブするようにベッドサイドのスマホを掴み取った。
「その音なら通話じゃなくて、メールかL◯NEの通知だろ?」
興を削がれた神宮寺が一気に不機嫌になる。
栞はパスコードをタップした。すると、ポップアップが出てきた。
L◯NEを送ってきたのは——姉の稍だった。
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