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Chapter 2
醜聞 ①
しおりを挟むリビングにあるL字型のソファに腰掛けた池原 隆は、マンハッタンパ◯セージのブリーフケースから古湖社の社名が入った角二サイズの封筒を取り出し、ローテーブルの上に差し出した。
マンハッタンパ◯セージは防水性に定評があるだけでなく、ステーショナリーやスマホなど鞄の中で迷子になりやすい物をそれぞれ収納するポケットがいくつもある。
さらには、PCやタブレットなど嵩張りがちな大きめのモバイル類もスッキリ収納できる仕切りもあって、バッグインバッグ要らずの優れモノとして、最近ビジネスマンに注目されているメーカーだ。
池原の前にコーヒーを置いた栞は、彼の持ち物がその鞄のそれぞれ収まるべき場所にきっちりと配備されているのを見て、
——うわぁ、この人、几帳面な人なんやろなぁ。
と、思わざるを得なかった。
「これが……週刊古湖から無理を言ってせしめてきた校正刷のコピーです」
神宮寺が自然と身を乗り出す。
「……はぁ?」
彼の前にフ◯ンフランの象牙色のマグカップを置いた栞も、好奇心が抑えられずについ覗き見してしまう。
「えぇ……っ⁉︎」
その瞬間、思わず、持っていたトレイを落っことしそうになる。
そこには、スーパーらしきところでカートを押す、パーカーにスリムジーンズというラフな格好をしたポニーテールの女性がでかでかと掲載されていた。
明らかに気づかないうちに撮られていたというアングルで、目の部分を黒い線で覆っているということは、彼女は芸能関係者ではない。
なによりも……その「見出し」だ。
【超イケメン ベストセラー作家 神宮寺タケルの「京都妻」!】
写っていたのは——栞だった。
「……見てのとおり、おれだけの問題じゃなくなった。こっちに来い」
そう神宮寺から言われた栞は、動揺してなのか、なんだか急に足元が覚束なくなるのを感じながらも、トレイをダイニングテーブルに置いて、代わりに自分用のマグカップを手にしたあと、ソファに座る彼の隣に腰を下ろした。
そして、なんとか気を落ち着けようと、カフェオレを一口飲む。
「なんだ……この記事はガセじゃなかったのか」
池原が栞のマグを凝視しながらつぶやいた。
——ああぁっ、先生とおソロやったわっ!
フ◯ンフランの象牙色のそれは、ご丁寧にもそれぞれのイニシャルの飾り文字が施してあった。
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