15 / 88
Chapter 2
風雲 ②
しおりを挟む栞はチーク材のダイニングテーブルで、食料品や日用品を購入したときのレシートを仕分けして「家計簿」をつけるための下準備をしていた。
——スマホの家計簿アプリをダウンロードして使えばいいか。
すると、それをちらりと見た神宮寺が、なぜか二階へ上がって行ったかと思うと、すぐにまた階下に降りてきた。
そして突然、テーブルの上にどさっ、となにかをぶちまけた。領収証やクレカなどの明細書だった。
「……これも、頼む」
節税対策で会社組織にしているのはいいのだが、すると今度は会社としての決算申告書の作成という(鬱陶しい)義務が生じてくる。
面倒なものはどんなことでもラララ星の彼方に投げ飛ばす彼は、当然のことながらそういう書類は束ごとそのまま顧問税理士に丸投げしていたらしい。
ちなみに、三月決算にすると年度の切り替えで連載が最終回を迎えたり逆に新連載が始まったりで忙しく、十二月決算にすると出版社が正月休みを考慮してすべてが前倒しされる年末進行に重なり地獄のような忙しさになるということで、九月決算だ。
……ということは、四月下旬といえども、神宮寺はかなりの量を隠し持っていた。
栞はため息を一つ吐くと、
「先生、帳簿のことはよくわかりませんけれど、巷では便利な会計ソフトがあるらしいですよ?」
と、言ってみた。
「ふうん、スマホでできるのか?」
「どうでしょう?画面が小さいと、さすがにやりづらいと思いますから、一般的にはPCじゃないですか?」
「じゃあ、PCでもタブレットでも好きなのを買っていいから、ソフトをインストールしてやってくれ」
なんだか、「家計簿アプリ」でパパッと済ませようと思っていたはずのものが、えらくスケールアップした気がしないでもないが……
だが、ようやく少しは「アシスタントらしい仕事」ができるのかな?と、栞は前向きに考えて、取りかかってみることにした。
栞は早速、予備校のバイト帰りに家電量販店に寄ってノートPCを購入した。
ログハウスに持ち帰ったあと、Wi-Fi回線を使えるように設定し、申告書類に最低限必要な損益計算書や貸借対照表を作れる会計ソフトをダウンロードした。
そして今、勘定科目ごとに仕分けした領収証類を振替伝票の画面に入力していた。自動的に総勘定元帳を作成してくれ、なんと損益計算書や貸借対照表にも連動しているのだ。
「……便利な世の中やわぁ」
会計処理のことなんてまったくわからないど素人の栞が、スマホで少しググって知識を得て会計ソフトを導入しただけで、ここまでできるのである。
思わず関心していると、目の前のスマホがヴヴヴッと鳴った。L◯NEが来たのだ。
【コーヒー】
二階にいる神宮寺からだった。
0
お気に入りに追加
66
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。
海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。
ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。
「案外、本当に君以外いないかも」
「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」
「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」
そのドクターの甘さは手加減を知らない。
【登場人物】
末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。
恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる?
田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い?
【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】


【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される
奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。
けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。
そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。
2人の出会いを描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630
2人の誓約の儀を描いた作品はこちら
「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」
https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041
イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。
すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。
そこで私は一人の男の人と出会う。
「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」
そんな言葉をかけてきた彼。
でも私には秘密があった。
「キミ・・・目が・・?」
「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」
ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。
「お願いだから俺を好きになって・・・。」
その言葉を聞いてお付き合いが始まる。
「やぁぁっ・・!」
「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」
激しくなっていく夜の生活。
私の身はもつの!?
※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
では、お楽しみください。


白い結婚は無理でした(涙)
詩森さよ(さよ吉)
恋愛
わたくし、フィリシアは没落しかけの伯爵家の娘でございます。
明らかに邪な結婚話しかない中で、公爵令息の愛人から契約結婚の話を持ち掛けられました。
白い結婚が認められるまでの3年間、お世話になるのでよい妻であろうと頑張ります。
小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。
現在、筆者は時間的かつ体力的にコメントなどの返信ができないため受け付けない設定にしています。
どうぞよろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる