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Chapter 1
邂逅 ⑤
しおりを挟む階段から降りてきた神宮寺は、テレビで観るよりもずっとイケメンで、顔がすっごく小さかった。
しかも、何気ないの長袖のボーダーTシャツにデニムパンツの姿なのに(ということは、ほぼ栞と同じファッションなのに)なんだか後光が射したかのようにキラキラしている。(実は、ラルフ◯ーレンのシャツとA.◯.C.のデニムが為せる技でもあるのだが。)
——おおっ、もしかして、これが『芸能人のオーラ』ってヤツ?
栞は目を見張った。
だが、神宮寺はそんな栞には見向きもせず、気怠そうな様子でL字型のソファに腰を下ろした。
「神崎……で、どこにいんの?そのオバサン」
「先生、神崎じゃなくて『佐久間』です。わたしが結婚して、もう五年経つんですけどね?」
しのぶの眉間のシワがさらに深くなる。
「それに、オバサンなんてここには呼んでませんよ。うちの夫がつい最近まで大学で面倒みていた子だって、言ったじゃありませんか」
「へぇ……あいつ、愛人囲ってやんの?あんなクソ真面目そうな顔して、なかなかやるじゃん」
しのぶの眉間のシワがマックスで深くなる。なんだか再生不能になりそうで、ヤバい。
「なに言ってるですかっ!うちの夫がそんなことするはずがないでしょうっ⁉︎」
「あ、あの……」
たまりかねて、栞が声をあげた。
すると、初めて神宮寺が栞を見た。ボストン型のバッファ◯ーホーンフレームの眼鏡を通して、アーモンド型のくっきり二重の瞳が、怪訝そうな色を醸し出す。
「……あんたが、その『オバサン』?」
——口が悪いのを除けば、童顔でかわいい感じの人やねんけどな。残念な人や。
栞は引き攣ってしまいそうになる顔をなんとか抑えた。
「言っても、大学出たばかりっつうことは、おれと同い年か」
少し癖のあるやわらかな黒髪を、神宮寺はぐしゃりと掻き上げた。
「い、いえっ、違います。院卒なので、二十七歳です」
栞は、すかさず「訂正」した。
「ええっ、あんた、その風貌でおれより五つも上かよ?」
神宮寺は仰け反った。彼には、カジュアルな服装をしたポニーテールの栞が二〇歳そこそこの学生に見えた。
——こっちこそ、五つも下のあなたには、言われたないねんけど。
「先生、八木さんは院卒と言っても、博士課程を修了えられてるんですよ」
そう言って、しのぶは栞が卒業した大学の名を挙げた。自分の夫の勤務先でもあるのだが。
「ええっ、旧帝大じゃん⁉︎……なんで、家政婦なんかになるんだよ⁉︎」
神宮寺はさらに仰け反った。
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