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Chapter 5
白日 ②
しおりを挟む「……連休明けにある新商品のプレゼン資料、もうほとんどできてるか?」
タブレットに目を落としたまま、青山が聞いてきた。
「は…はい。だいたいは」
稍もまた、PCから目を離さず答えた。
これが二人の「通常運転」だった。
「そのデータのまとめ、何時くらいには終われそうだ?」
——今朝は「今日中でいい」って言ってなかったっけ?だから、麻琴さんにもそう伝えたってのに。
稍は思わず、チッ、と舌打ちしそうになる。ちょっと、余裕そうに見せるとすぐこれだ。まだなにか、させたいことがあるのだろう。
——これがあたりまえだと思ったら、大間違いなんだからね?あたしの後任のハケンさんは大変だろうなぁ。
今度はため息を吐きたくなった。
「何時頃、終われるんだ?」
青山が不機嫌そうにもう一度訊く。
「そうですね……定時の一時間前くらいには、なんとか」
稍は手首のエル◯スのクリッパーを見ながら、渋々答える。
——あぁーあ、絶対に、また仕事が増えるぅ。
それでも、青山は派遣の稍には絶対に残業はさせないのだが……
「新商品のプレゼン資料の確認をしたいんだ。その時間にミーティングルームの予約入れて、プロジェクターの準備をしておいてくれ」
どうやら、パワーポ◯ントのスライドを動作確認するためらしい。
——なぁんだ、ミーティングルームの準備だったんだ。
「わかりました。……では、メンバーに召集のメールしておきます」
稍はそう言いながら、今作業していた画面をいったん下げて、メンバーのスケジュール確認の画面を立ち上げた。
「あっ……石井さんがその時間に帰社予定で、山口さんが客先から直帰になってますけど」
今度はメールボックスを立ち上げながら、稍がそう言うと、
「いや……ほかの者は呼ばなくていい」
青山から意外な言葉が返ってきた。
——新商品のプレゼンの確認だよね?メンバーの意見はいいの?
「じゃあ、麻琴さんだけにメールします」
当然のように稍がそう言うと、なぜか隣からため息が聞こえた。
「同じことを何度も言わせるな。ほかの者は来なくていい。……ややだけでいい」
——今、「やや」って言った?それとも、「やぎ」を聞き間違えた?
稍はごくり、と唾を飲んだ。
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