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Chapter 3
巡合 ①
しおりを挟む——なんて、綺麗な立ち姿なんだろう。
Vネックでノースリーブのトップにボトムが膝丈のバルーンスカートになった、ミントグリーンのカクテルドレスを着た女から、山口は目を離せずにいた。
セミロングのエキゾチックな黒髪。ヒールを履いて一七〇センチほどある身長。ぱっくり開いた背中からちらりと覗く「天使の羽」の肩甲骨に、きれいに筋肉のついたカモシカのような脚……
超絶に、いいオンナだった。
山口が合コンに駆り出されて会う、上目遣い&色目違いの女たちとは、まったく異なっていた。
彼女たちは決まって、肩が前に入った猫背で姿勢が悪く、脚は筋力がないから内股で立つようになり、すっかりO脚に湾曲しているにも気づかないで、折れそうなほど細っこい脚を大の自慢にしている。
——運動器症候群まっしぐらで、ババァになったら寝たきり確定だぜ。
今すぐ駆け寄って、話しかけたいのに……その背筋をピンと伸ばした凛とした雰囲気が、そうさせるのを許さない。
見渡せば、周囲の男たちがちらちらと、彼女の様子を伺っている。
だが、やはり彼女の持つ孤高の「オーラ」に気圧されて、声をかけられないでいるみたいだ。
ヤツらに先を越されてたまるか、と山口は思わずにいられなかった。
そして、意を決して、いざ、声をかけに行こうと思った矢先……
——げっ、先を越されてしまった。
バレリーナのように華奢で小柄な体型をした女が、彼女に声をかけていた。
思いがけず偶然会ったみたいで、彼女の方はびっくりしていた。
女の方はふんわりとアップにした髪に、パフスリーブの部分がシースルーのトップでボトムが膝丈のペプラムスカートになった、サーモンピンクのカクテルドレスを着ていた。
彼女と話しているうちに、女の少し近寄りがたく感じられた整った顔がほころんで、人懐っこい笑顔があらわれた。
——「類友」だな。どっちもいいオンナだ。
美しい二人が楽しそうに話す姿に、周りの二人連れの男たちがそわそわしだした。話しかけるタイミングを計っているのは見え見えだ。
山口も周囲を見渡した。こんなときに限って、同期も後輩も姿が見えない。
——なんで、青山さんしかいねえんだよっ!
山口は心の中で、全身全霊で叫んだ。知った顔は少し離れたところにいる青山くらいだった。
——青山さんに「あそこにすんげぇ美人の二人がいるから、一緒に声かけに行きましょうよっ」なーんて、言えやしねえよっ!どんな罰ゲームだよっ⁉︎
そのとき、二人の男が彼女たちに近づいて行くのが見えた。
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