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8「ミルキーの別れ」

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8「ミルキーの別れ」

  ミルキーがシリパの会を訪れてから約一年が過ぎた。
シリパの会でもすっかり人気者でミルキー目当てに来る会員もいるが、ただ普通に
好奇心だけではミルキーは見えないので自分の波動を上げる必要があった。 

最初の切掛けはミルキーへの好奇心であっても、そのうち自分の固定概念が
邪魔になっていることに気付き始め、会のプロセスに沿って実行するようになり
意識が変わる者も多くいた。

会員のひとりが「ミルキーさんって結婚とかしないの?」 

「私はシャーマンだからしなくてもいいダニ。 でも、今後は解らない……」  

「好きな人いないの?」  

「旭川のコタンにひとりいるダニ…… ダニ。 

私達の結婚は人間の世界のとすこし違うダニよ。 私達は魂の結合を意味するの。 
だから結婚すると二つの魂が一つに重なり合って新しい一つの存在になるダニ。 
それが私達の結婚の意味ダニ……」 

「なんかステキですね。 ありがとうございます」

このような形でミルキーはいつも質問攻めであった。 そんなある日ミルキーが京子の所にやって来た。 

「京子さん、そろそろミルキーは二風谷に戻る時期が来たみたいダニ。 
これからは本格的に北海道内の自然界の浄めの旅に出なさいと長老さんに指示されたダニ」 

「ここを拠点に出来ないのかい?」  

「二風谷には特別な場所があって浄めの旅で、下がってきた波動を調整してくれる
特別の場所があるダニね。 だから二風谷を拠点にするのが都合が良いダニ」 

「そうかい。こっちの都合ばかりいえないよね。 じゃ、みんな集めてミルキーの送別会しようかね」  

「京子さん、ミルキーはこのまま二風谷へ帰ります。 シリパの会の皆さんに会うと別れが辛くなる…… ダニ」

「……そうかい、またおいでよ。 いつでもあんたは大歓迎さ。 
楽しい日々を一緒に過ごさせてもらったわ、ありがとうございます。 
立派なシャーマンになってね」  

京子の目から涙が溢れてきた。 ミルキーは手を振りながらゆっくりと消えていった。
メメちゃんちょっと来て京子が云った。

「実は今朝ミルキーがきて……」事の次第を話した。 

「だから会員さんにミルキーからくれぐれも宜しくと伝えてね……」

「そうですか。 解りました皆さん残念がるわね、私も寂しいです」

ミルキーとの別れから数ヶ月が過ぎ、ミルキーの事を語る人も少なくなった。 
 
ある時ママが呟いた「あ~あ、こんな空白の時間にはミルキーちゃん最高よね。 
色んな話題提供してくれたわ。 特に動物の意識とか自然の摂理の話しなんて楽しかった」 

メメも「そうですね。 今まで人間サイドだけの考えで、とくに動物学者さんなんて
語ってたけど、実際にミルキーさんの話しと大きく違うところ多かったわね。 勉強になった」 

「そう、動物はオーラを視て感じてるなんて絶対に学者さんなんて解らないわよね……」  

「今頃、お浄めの旅であっちこっち飛び回ってるのかしらね」  

二人は宙を見つめていた。

「ごめんください」訪問者があった。 

「ハイ」メメが応対した。 

「あの~う。 私はオイマツと申しますがこちらにミルキーさんという
妖精さんが居ると聞いて来たんですけど……?」 

「ミルキーとは非物質の存在でして、誰でも視えると云うものではありません。 
それに今は帰郷しましたがなにかありましたか?」  

「そうですか。 実は私の家の納戸に小人さんが数人住んでるみたいなんです。 
私は見えないですけど気配と話し声を感じるんですね、それでこちらにもそういう方がいると
聞いたのでお邪魔しました」  

「そうですか。 それでミルキーさんにご相談というのは?」 

「はい、何故我が家なのか? 何か要求ごとがあるのか通訳っていうんですか? 
その子達の声を聞いて欲しいと思って訪問させていただいた次第なんです」  

「そうですか。 チョット待って下さい」メメはママの顔を見た。 

ママが「今言った事情でミルキーは日高に帰郷したんですよね、もしよかったら私で良ければ、
その小人さんに話し聞いてみましょうか?」 

「えっ、お願い出来るんですか?」 

「断言は出来ないですけど、試す価値はあると思います。 
わたしミルキーという妖精とコンタクト取れてましたから試す価値はあります」  

「はい。ではお願いします」 

「それでは深呼吸を三回して私の手を取ってその情景を心に思い浮かべて下さい」

「ここで、ですか?」

ママが「あの世界は時間や距離がないんです。 いつも今なんですね」

オイマツはママの手を取って思い浮かべた。 ママはその納戸に飛んだ。 
するとそこには6人の妖精がいた。 

「こんにちわ、私はマチコといいます。 この家の方があなた達が何の目的でこの
納戸にいるのか教えてほしいと私の所に相談に来たの、それで私がここに来ました。 
事情を聞かせてもらえませんか?」

マチコママは単刀直入に聞いた。  

「私達は白老町のコタンから来た妖精ダニ。 ここの子供さんにレイトくんという
私達の知り合いがいるんです。 ここに生まれる前は私達の仲間だったダニ。 
今度は人間として生まれるから、生まれた時には是非遊びに来てねっていわれました。 
明日がレイトくんが誕生して三年目なんです。 
それが過ぎると私達の意識が伝わりずらくなるので最後の誕生祝いの儀式を何日間かやってました。 
それも明日で終了です。 驚かして申し訳ありませんダニ。 明日になったら帰ります」

ママは戻ってきた「オイマツさん、もう少し私に時間くれますか?」 

「?ハイ、かまいませんけど」再びママはオイマツの手を握り集中した。
 
そこは白老のアイヌコタン「オイマツさん、ここは白老にあるアイヌのコタンです。 
この集落の湖の奥まった所を意識してくれますか?」 

「はい、小さな人たち数人が花から蜜のようなもの? を集めてます」 

「あの人達はここの妖精達。 そこにオイマツさんの知ってる人がいますか?」 

「あの黒い毛皮のベストを着た妖精さんってたぶん、私……? 見覚えあります」

「よく思い出してください……」

「たぶん私です。 その横にいる髭の人が主人です」

「そうですか。 そのご主人が今のあなたの息子さんのレイトくんなんですよ」 

ふたりは戻りマチコママが「いまのビジョンで息子さんとの縁が解りましたか?」 

「はい、夫婦でした……」

「それは大いにあり得る事です。 不思議でも何でもありません。 
お宅の納戸にいる妖精達はレイトくん誕生の祝いの儀式を数日掛けてしていたようですね、
レイト君が生まれる前の彼らとの約束みたいですよ。 明日には終って帰るみたいです。 
ご迷惑掛けたこと詫びてました」  

「そうでしたか、ありがとうございました」 

狐につままれたように半信半疑でオイマツは帰っていった。

「ちょっとサービスし過ぎたかしら? 聞くよりも視た方が早いと思ってサービスしちゃったわよ。 
余計な知識がない人の方がトリップするの楽ね。 

それと妖精も人間に転生するんだと解ったわよ」
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