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1「二風谷の妖精ミルキー」

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一「二風谷の妖精ミルキー」

 シリパの会は来客の出入りが多く、慌ただしい一日となりメメは夕食を外で済ませ、夜十時の帰宅となった。 部屋のドアを開けた瞬間、ちょっとした異変に気付いた。 数日前から部屋がスズランの香りがほのかに香る? スズラン系の香料を含んだ物は無いはずと思っていた。 原因がわからないが気にするほどの事でもないし、スズランの香りは嫌いではなかったので原因を追及せずにいた。 

遅めの風呂と洗濯となったが、ひととおり済ませベットに入ったのは十二時を過ぎていた。
メメ至福の瞬間である。 そのまま寝入った刹那! スズランの香り…… 今までより強く感じた。 辺りを見回した次の瞬間ゴミ籠の裏に隠れたなにか黒い影を発見した。 

メメは思わず「なに?」そして恐る恐るゴミ籠の裏を確認した。

そこには二十センチほどの小さな人影。 お互い眼と眼が合った。

内心驚いたが平静を装ったメメが優しく聞いた。 

「今晩は私はメメ。 あなたはどなたですか?」 

仕事がら異空間の存在とのコンタクトはお手のものだった。 

「私に名前はありません。 日高はニ風谷の山からこの街に来たダニ」 

「どうしてこの家に来たの?」 

「花屋さんで遊んでいたら、あなたが店の前を通りかかったダニ。 なんだか分かんないけどあなたと話をしてみたくなり、後をついて来てしまった…… ダニ」

「なん日も前からここに居るでしょ?」

「そうダニ。 いつ気が付いてくれるか待ってたダニ」 

「それで最近この部屋は花の香りがしたのね。 これはあなたの香りだったの?」

「臭くてすみませんダニ」 

「あっ、謝らなくていいの。この香りわたし好きよ。 それよりあなたに名前付けない?名無しさんだと話しにくいし、好きな名前なにかある?」 

「ミルキー…… ダニ」  

「ミルキーさんか…… 可愛いね、なにか意味あるの?」 

「前に世話になってた家の人が付けてくれたダニ。 それがいいダニ」  

「そっか、じゃあミルキーさんね、よろしく。 ところでミルキーさんは年齢幾つぐらいなの?」 

「ミルキーに歳はないダニ」

「そっか、ゴメンねついこの世界の癖なのよ。 で、なんでニ風谷からこの札幌に来たの?」  

「仲間はみんな植物の世話してるけど、私は違う事やってみたいって長老にそう言ったダニ。 そしたら長老さんが我々部族は昔からそう決まってるってわたしを怒ったダニ。
皆と同じことが出来ないなら村から出て行くように命令されたダニ。 それで出て来てしまったダニよ」

ミルキーの目は半分涙ぐんでいた。 

「で、ミルキーさんは何をやってみたかったの?」 

「ないダニ」 

「え……?」 

「違う世界を見た事があまりないから、なにをやりたいか解らないダニ」 

「なるほどね。 じゃあ、やりたいことが見つかるまで私の部屋に居てもいいわよ。 ゆっくりやりたいことを探してちょうだい。 ず~っとここにいていいわよ」 

「メメさんありがとう……ダニ」

「今日は遅いからまた明日話そうね。 わたし眠いから寝ます。 お休みミルキーさん」 

「メメさん、ひとついいダニか?」 

「はいどうぞ」 

「ミルキーは寝ないダニ」 

「どうして?」 

「生まれてから一度も寝た事ないダニ」 

「そっか、私たちのこの世界は身体があるから休めないと壊れちゃうのよ。 だから八時間ぐらいは身体を休めるのね。 それを寝るっていうの。 お休みなさい」メメは即寝に入った。

翌朝六時にメメは起床した。 

「ミルキーさんおはよう」 

「メメさん。 どーもダニ」

「朝までなにやってたの?」  

「そこの公園で花の手入れしてたダニ。 サルビアの蜜がいっぱいあったから、ついでに持ってきたダニ。 人間はサルビアの蜜好きダニか?」

「あ、ありがとう。 ミルキーさんうれしいです」 

「ミルキーでいいダニ」  

「はい、ミルキー。 私もメメでいいダニ」 

「ダニダニ」ミルキーはこの家に来て初めて笑った。 

「今日は仕事に行くから適当にやってていいよ。 帰りは夜の七時頃になるけど」 

「仕事は何?」 

「う~ん、説明できないよ…… そうだ私について来る?」  

「行くダニ」二人はシリパの会に向かった。

「おはようございます」メメがケンタに挨拶をした。 

「メメちゃん今日は目が光ってるね。 何かいいことあった? れれ?メメちゃん、また可愛いお友達肩に乗せてどうしたの……?」 

メメは笑顔でケンタの側に寄ってきた。 

ケンタが「おやっこれは妖精さんだね。 珍しいお客様で」

メメが「こちら日高の二風谷から来たミルキーさん。 年齢不詳、性別は無いらしいけど見た感じ女の子の意識が強いみたい」

「こちらは私のボスでケンタさんです」  

「ミルキーさんよろしく」

「ケンタさん。 よろしくお願いしますダニ」  

「あはは、可愛いね。ゆっくり遊んでいって下さいね」

ケンタが続けた「ミルキーさんは食事とかどうしてるの?」 

単純な質問である。

「私たちは花や木のエナジーを頂くダニ」  

「なるほど」 

メメが「色々な経験がしたくて街に出て来たらしいのね。 それで私がたまたま花屋の前を通りかかったら、私に目が止り興味を持ったみたいで、家までついて来たらしいの」  

「それは、それは。メメちゃんのどんな所に興味持ったのかな?」

「メメのオーラがみんなと違ったダニ。 それで確かめたくなった」

「そうですか。納得いきました。 シリパの会へようこそ」 

会員のアヤミさんが入ってきた。

「おはようございます」 

アヤミは全く気付いてないようだった。

ケンタとメメは目を合わせた。 

メメは心の中で「人によっては見えないのね」 

ケンタが「アヤミさんこの石を手に持ってメメさんの机の上を見てくれるかい」そう言って石をアヤミに渡した。 

アヤミはいわれたとおりメメの机に目をやった。 

「えっ、これは」メメがにこやかな顔で頷いた

「こんにちわ」 

「こんにちわ、私ミルキー。 二風谷から来てメメさんの家で昨日からお世話になってるダニ」  

「私はアヤミです札幌生れです。 よろしくダニ」  

ミルキーは喜んだ。

「メメさんこの子どうしたんですか?」 

「今もケンタさんに話してたの。 花屋の前を通りかかったら私が目に止まったらしく興味を持ったみたいでついて来の」 

アヤミが「おもしろい」 

その時、ミルキーがアヤミの手にある黒い石を見て叫んだ。 

「あっ! それ! その石どうしたダニ?」  

「これ?」 

アヤミはケンタの顔を見た。  

「なんでこの石に興味があるの?」とケンタが聞いた。 

自分のポケットから同じ形の赤い石を取り出した。
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