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番外編 夢の続きをあなたと2
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そんなふうに幸せに暮らしていたふたりのもとに、ある日王都から手紙が届いた。
最初に読んだのはカイだった。
「誰から?」
アデリナの問いにカイは困惑げな声を出す。
「いや、ジェインがこっちに来るそうだ」
「まぁ! 急な話だけど、楽しみだわ」
アデリナは素直に喜ぶが、カイは複雑そうな表情をしている。
「ジェインが来るのは構わないんだが……どうやら陛下も一緒らしい」
「えぇ!?」
これにはアデリナも目を丸くして仰天した。
「陛下って、即位したばかりのヨセフ陛下よね?」
「そりゃ、この帝国に陛下と呼ばれる人はひとりしかいないだろ」
ふたりの間を沈黙が流れていく。アデリナはじっとカイの目を見据える。
「カイ。あなた、気づかぬうちになにかやらかしてたり……」
「それは断じてない」
アデリナの言葉にかぶせるようにカイは言う。
「じゃあ、どうして陛下がわざわざモリンザまで?」
モリンザは素晴らしい街だが、はっきり言ってしまえば辺鄙な田舎でもある。飢饉や暴動でも起きたというならともかく、平時に皇帝自らが訪れるような地ではない。
「ジェインもよくわからないらしい。が、とにかく数日後に陛下がここに来ることは間違いない」
そして約束の日。アデリナは早起きして、屋敷中を掃除したり、おもてなし用の茶菓子を買いに出かけたりと忙しく過ごした。午後にはカイも騎士団の任務から戻ってきて、一緒にヨセフを出迎える予定になっている。
「紅茶の茶葉はどれがお好みでしょうかね?」
サーシャに聞かれてもアデリナには答えようもない。ヨセフはつい最近までほとんど世に名前を知られていなかったのだ。人となりも好みも、アデリナはなんの情報も持ってはいない。
「どんな方なんでしょうかね?」
「う~ん、個性的な方だとカイは言ってたけど」
サーシャとアデリナが雑談していると、玄関のノッカーが鳴った。まだお昼前だ、ジェインと陛下が到着するのにはずいぶんと早い。カイが早めに戻ったか、お隣のおしゃべり好きな奥さんだろうとアデリナは考えながら玄関を開けた。
ところが、その予想は大外れだった。
「やぁ、こんにちは」
太陽のようにきらめく金の髪、右の瞳は茶色、左の瞳は髪と同じ金色をしている。
(うわぁ、なんて美しいオッドアイなのかしら)
アデリナは彼の瞳に吸い寄せられるように言葉を失い、見惚れてしまった。だが、彼の後ろからひょこっと顔をのぞかせたジェインの姿にはっと我に返る。
「ジェインさま! ということはこの方が……」
アデリナは慌てて最敬礼の姿勢を取る。それを見たサーシャもアデリナにならう。ジェインは困り切った表情で告げた。
「そう、このお方が新皇帝、ヨセフ陛下だ」
「まったく、ジェインは堅苦しいな。いいから、いいから、普通にしててよ」
少年から青年へと変わっていくこの時期だけの、瑞々しさにあふれる笑顔を彼は見せる。どこの街にもいる元気な少年のようでいて、やはり皇族らしいオーラをしっかりとまとっている。
(この方が我が国の新しい皇帝……)
アデリナは新鮮な驚きを覚えたが、それを顔に出すことはもちろんせず、オーギュスト家の嫁としてソツない態度を取るよう心がけた。
(妻は出すぎす、引きすぎず、よね)
「申し訳ありません。予定よりずいぶんお早い到着でしたので、まだ主人が戻っておりませんの」
これにはジェインが申し訳なさそうに弁解する。
「安全を最優先して馬車で来るつもりだったんだが……」
「馬車は時間がかかりすぎる。騎馬のほうがずっと速いよ。僕は時間の無駄が嫌いだ」
どうやらヨセフの希望で急遽、騎馬での移動に変更になったようだ。ジェインはかなり彼に手を焼いている様子だ。
「そうだったんですね。では、主人が戻るまでどうぞ屋敷のなかで」
アデリナがほほ笑み、ふたりをなかに案内しようとすると、突然ヨセフがアデリナの手を取った。
「きゃっ」
アデリナの手首をつかみ、まじまじと顔を見つめる。
「あの、なにか粗相がありましたでしょうか?」
ヨセフはけろりと言ってのける。
「いや。ジェインの奥さんはものすごい美人だなと。こんな綺麗な人は初めて見る」
ジェインはもはやヨセフの前でもあきれ顔を隠さない。ため息交じりに訂正する。
「僕の妻ではなく、僕の弟の妻ですよ」
「あぁ、そうだったね!」
ヨセフは明るく笑うが、手を離してくれる気はないようでアデリナは困り果てた。彼が相手では、振り払うわけにもいかないだろう。
そのとき、静かな声とともにアデリナの手がヨセフから引き離された。
「俺の妻に触れるな」
カイが恐ろしい形相でヨセフをにらんでいる。アデリナは慌てふためいて、カイの腕を引き彼に耳打ちする。
「カイ。この方は――」
カイにはヨセフの顔がよく見ていなかったのだろう、アデリナはそう思ったのだが、どうやら違ったようだ。
「わかってる」
カイはアデリナに短く答えると、あらためてヨセフに向き直った。
「たとえ皇帝陛下であっても、妻には指一本触れないでいただきたい」
カイは一歩も引かずヨセフを見据える。一方のヨセフはなぜだか楽しげにほほ笑んでいた。アデリナとジェインが必死にその場を取り繕って、ヨセフを応接間へと案内した。
最初に読んだのはカイだった。
「誰から?」
アデリナの問いにカイは困惑げな声を出す。
「いや、ジェインがこっちに来るそうだ」
「まぁ! 急な話だけど、楽しみだわ」
アデリナは素直に喜ぶが、カイは複雑そうな表情をしている。
「ジェインが来るのは構わないんだが……どうやら陛下も一緒らしい」
「えぇ!?」
これにはアデリナも目を丸くして仰天した。
「陛下って、即位したばかりのヨセフ陛下よね?」
「そりゃ、この帝国に陛下と呼ばれる人はひとりしかいないだろ」
ふたりの間を沈黙が流れていく。アデリナはじっとカイの目を見据える。
「カイ。あなた、気づかぬうちになにかやらかしてたり……」
「それは断じてない」
アデリナの言葉にかぶせるようにカイは言う。
「じゃあ、どうして陛下がわざわざモリンザまで?」
モリンザは素晴らしい街だが、はっきり言ってしまえば辺鄙な田舎でもある。飢饉や暴動でも起きたというならともかく、平時に皇帝自らが訪れるような地ではない。
「ジェインもよくわからないらしい。が、とにかく数日後に陛下がここに来ることは間違いない」
そして約束の日。アデリナは早起きして、屋敷中を掃除したり、おもてなし用の茶菓子を買いに出かけたりと忙しく過ごした。午後にはカイも騎士団の任務から戻ってきて、一緒にヨセフを出迎える予定になっている。
「紅茶の茶葉はどれがお好みでしょうかね?」
サーシャに聞かれてもアデリナには答えようもない。ヨセフはつい最近までほとんど世に名前を知られていなかったのだ。人となりも好みも、アデリナはなんの情報も持ってはいない。
「どんな方なんでしょうかね?」
「う~ん、個性的な方だとカイは言ってたけど」
サーシャとアデリナが雑談していると、玄関のノッカーが鳴った。まだお昼前だ、ジェインと陛下が到着するのにはずいぶんと早い。カイが早めに戻ったか、お隣のおしゃべり好きな奥さんだろうとアデリナは考えながら玄関を開けた。
ところが、その予想は大外れだった。
「やぁ、こんにちは」
太陽のようにきらめく金の髪、右の瞳は茶色、左の瞳は髪と同じ金色をしている。
(うわぁ、なんて美しいオッドアイなのかしら)
アデリナは彼の瞳に吸い寄せられるように言葉を失い、見惚れてしまった。だが、彼の後ろからひょこっと顔をのぞかせたジェインの姿にはっと我に返る。
「ジェインさま! ということはこの方が……」
アデリナは慌てて最敬礼の姿勢を取る。それを見たサーシャもアデリナにならう。ジェインは困り切った表情で告げた。
「そう、このお方が新皇帝、ヨセフ陛下だ」
「まったく、ジェインは堅苦しいな。いいから、いいから、普通にしててよ」
少年から青年へと変わっていくこの時期だけの、瑞々しさにあふれる笑顔を彼は見せる。どこの街にもいる元気な少年のようでいて、やはり皇族らしいオーラをしっかりとまとっている。
(この方が我が国の新しい皇帝……)
アデリナは新鮮な驚きを覚えたが、それを顔に出すことはもちろんせず、オーギュスト家の嫁としてソツない態度を取るよう心がけた。
(妻は出すぎす、引きすぎず、よね)
「申し訳ありません。予定よりずいぶんお早い到着でしたので、まだ主人が戻っておりませんの」
これにはジェインが申し訳なさそうに弁解する。
「安全を最優先して馬車で来るつもりだったんだが……」
「馬車は時間がかかりすぎる。騎馬のほうがずっと速いよ。僕は時間の無駄が嫌いだ」
どうやらヨセフの希望で急遽、騎馬での移動に変更になったようだ。ジェインはかなり彼に手を焼いている様子だ。
「そうだったんですね。では、主人が戻るまでどうぞ屋敷のなかで」
アデリナがほほ笑み、ふたりをなかに案内しようとすると、突然ヨセフがアデリナの手を取った。
「きゃっ」
アデリナの手首をつかみ、まじまじと顔を見つめる。
「あの、なにか粗相がありましたでしょうか?」
ヨセフはけろりと言ってのける。
「いや。ジェインの奥さんはものすごい美人だなと。こんな綺麗な人は初めて見る」
ジェインはもはやヨセフの前でもあきれ顔を隠さない。ため息交じりに訂正する。
「僕の妻ではなく、僕の弟の妻ですよ」
「あぁ、そうだったね!」
ヨセフは明るく笑うが、手を離してくれる気はないようでアデリナは困り果てた。彼が相手では、振り払うわけにもいかないだろう。
そのとき、静かな声とともにアデリナの手がヨセフから引き離された。
「俺の妻に触れるな」
カイが恐ろしい形相でヨセフをにらんでいる。アデリナは慌てふためいて、カイの腕を引き彼に耳打ちする。
「カイ。この方は――」
カイにはヨセフの顔がよく見ていなかったのだろう、アデリナはそう思ったのだが、どうやら違ったようだ。
「わかってる」
カイはアデリナに短く答えると、あらためてヨセフに向き直った。
「たとえ皇帝陛下であっても、妻には指一本触れないでいただきたい」
カイは一歩も引かずヨセフを見据える。一方のヨセフはなぜだか楽しげにほほ笑んでいた。アデリナとジェインが必死にその場を取り繕って、ヨセフを応接間へと案内した。
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