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ピンポーン

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「青井湊太さんですね。あなたに殺人の容疑がかかっています」
「は? 」



 俺は人畜無害な変態、青井湊太。性欲が強く露出願望のある外見平凡、中身はファンタスティックな人間だ。誰かに自分のあられもない姿を見て欲しいと強く願っているからといって、路上でやるのは犯罪。
 誰かを不愉快にしたいわけでも、捕まりたくもない俺は人気のない山や、自室での自慰をインターネットで配信するなどしてこの性癖を抑えてきた。因みに、インターネットの配信はそう言う・・・・サイトで行っていて、そこには、俺と同等それ以上の変態が蔓延る魔窟だ。
 そのサイト利用者は、殆どがゲイであり、動画を配信したり、それを見てぬいたり、気に入ったユーザーがいたら『お気に入り』ボタンを押し、リアルタイムでコメントを送ることが出来る。

 俺はそこそこ人気者で、アカウント名はSouT、お気に入り数は三桁を超え殿堂入りユーザーだ。俺の動画はいつもリアルタイムだから、画面の奥のユーザーがあの独白なイントネーションの機械声で悶える俺を煽ったり、貶したり、褒めてくれて俺はその度に快感によりしれる。



「どういうことですか!? 俺は、」

「あなたは先週の土曜日、国道○○号付近の山へ行きましたね?」


 殺人の容疑なんて、アブノーマルな事態に驚くことしか出来ない俺に、目前のやけに美形な刑事は、それを無視するように質問というよりは強引な確認をしてきた。

「そ、それは確かに行きました」

「どうしてあのような人気のない場所に行ったんですか? 」

 え、自慰動画撮るためですけど。なんて、言えるか!?いや、言えない。

「えっと、色々あって。……まさか、そこで遺体が見つかったとかじゃありませんよね? 」

「ええ、その通りです。被害者はあなたの上司の妻、米沢紗栄子。あなたと面識はありましたよね? 」


 マジかー。俺、超怪しいじゃん!!
 現在、日曜日の朝八時。社畜な俺は、休みの日くらいゆっくり寝るぞという方針にしたがい、チェックのパジャマを着ている。まさか、朝一番から身に覚えのない罪でチェックメイトされかけるとは、思うまい。どっどっとうるさく鳴る心臓を意識しないように、無意識に頭を抱えながら、俺は今真実を言うか言わないか必死に天秤を揺らした。

 こんな沈黙さえ、疑う立場の警察から見れば怪しく見えるのかもしれない。刑事はガタイの良い体型で、男らしい美形は普段なら眼福眼福とその容姿を楽しむのだが、そんな余裕、今は冷蔵庫にしまってある。溝に捨てる? そんな勿体ないものするものか。後で刑事プレイのオカズに使ってやるさ。

「ありました。ありましたよ?でも、顔を知っているだけで接点はほぼありませんし、米沢さんの奥さんに興味もありません」

「では、何故あの時間あの山に行ったんですか?」

「そ、それは」


 一回誤魔化しかけたと思ったが、どうやらそんなに簡単には行かないらしい。いや、まあ、そうだよね。うん、知ってた。なんかこの刑事さん、やり手っぽい雰囲気出してるし、しつこそう。

 言ってしまうか。
 おなってしました、って言ってしまうか。
 うん。殺人犯にされるくらいなら言ってしまおう。

「……ヤってたんです。あそこで」

「自白ですね」

「あ、いやいやそっちのやってたじゃなくて。違う方の」

「違う方とは?」

「性的な意味で」


 あーーー。言ってしまった。絶対変態って思われる!!

「それは、おかしいですね。カメラにはあなた一人しか写ってませんでしたよ」

「そ、それは。あの、だって一人でしたし」

「一人でセックスは出来ませんよ」

「違っ、その一人プレイです!!!」


 あ、やっぱりオナニーの方が恥ずかしくなかったかもしれない。

「…ふざけないで下さい。そんな変態行為あるわけないでしょう」

「それが残念!あるんですねっ!これが!人にエロい所を見られるのが三度の飯より大好き、変態魔人はあるんですよ」

 眉間に皺を寄せた刑事さんに、俺はもうヤケクソで叫ぶ。捕まるよりマシだ。例え、刑事さんに変態魔人だとばれようと捕まるよりマシだ。そうだ。それに、なんだか刑事さんの蔑む目がどんどん気持ちよくなってきた。ああ、俺、エム属性もあったのか。

 刑事さんは、動物のフンを見た後カレーを食べる時みたいな表情で、勇気ある告白をした俺を見て、俺の矛盾点を容赦なく指摘した。

「例え、あなたが蚊以下の変態エロ魔人だとして、あなたは今見られるのが好きとおっしゃった」

「いや、俺、蚊以下なんて言ってない……」

「失礼。穴という穴があったら穢らわしい息子を勃起させて、狂ったように腰を振りだくるような変態エロ魔人さん。見られるのが好きと仰いましたが、あなたは一人だったはず。おかしいですね」

「いや、刑事さん。誤解があります。あの時、俺は一人でいて一人ではなかったんです。それに、俺は穴があったら入れたい派ではなく、入れられたい派です。縛られたら尚良しです」

「……雄のくせにメス穴濡らす淫乱変態ビッチさん。一人でいて一人でないとはどういうことですか?」

 刑事さんは、ドSらしい。どうしてここまで俺を悶えさせる言葉を選ぶのか。濡れない穴もなんだか濡れてきそうな気がする。
 あれ、もしかして誘われてるのかな?え、この言葉攻め、そういうこと?処女ビッチな俺、分かんないよ。そういうアダルトなお約束分かんないよ!?

「それは、ですね。あの、ネット配信というか。画面の向こうに沢山の人がいるから一人じゃないという意味で。つまり、森でオナニーしてそれをリアル配信して楽しんでいたんです」

「なるほど。ウインナーだけで疼くような淫乱な体は一人の視線じゃ物足りなくてもっと多数の視線の為に、自慰をネットで。……証拠がありますか?ネットでの配信となればアリバイとなりますが、その動画は残っていますか?」

「勿論、残っています」

「では、見せてください」

「はい?」

「その自慰動画を証拠として見せて下さい。今すぐ、この場で。部屋に入らせて頂いても?いえ、自称変態魔人のあなたなら屋外で自分のエロ動画を見られた方が興奮するでしょうが、私は誤解されたくないので。あなたとは違って淫乱な変態エロ魔人とは違いますので」

 俺は、今まで自室に人を招いたことは一回もない。親でさえ、俺のワンルームに入れたことはない。そう、それは俺の部屋が俺の変態王国に仕上がっているからだ。気に入っているディルドとバイブはガラスケースに入れて飾ってあるし、部屋は好きなセクシー男優のポスターで埋めつくられている。

 つまり、部屋に侵入された時点で、俺の人生はつむのである。

 だが、何回でも言おう。背に腹はかえられない。

「……どうぞ」

「……」

「今、PCたちあげるので待ってください」

「別のモノは勃ち上げない下さい」

「……勿論ですとも」


 嘘です。これから自分のあられもない姿を見せると思うと興奮して堪らない。俺の使われないピンク色の息子は、既にパンツの下で硬くなり始めている。

 しょうがないじゃないか。そう言う性癖なのだ。

 刑事さんも無茶を言う。

「どうぞ」

 狭いワンルームに、男の喘ぎ声が響く。それを、じっと見つめる刑事さん。
 ああ、見られてる。こんなにも、じっくり、端から端まで余すとこなくじっくりと、見られてる!俺は、今、見られてる!!

 刑事さんにしては、真剣だったのかもしれない。これは、俺の無罪を証明する大事な証拠だ。

 それなのに、俺はもう堪らなくて。

「近くでハアハア言わないでもらえます?あなたの雌穴に自然薯でもさしてやりたいような気持ちになるので」

「是非!」

「……」

「自然薯プレイしたみたいです」

「本当に見境のない変態ですね。会って五分もしない相手に特殊プレイを頼むなんて、あまりに淫乱過ぎて話にならない。そんなに我慢出来ないのなら公園で公衆便所にでもしてもらえばよろしいのでは?」

「そんな、初めては好きな人って決めてるので」

「変態淫乱魔人の癖に乙女ちっくですね。というかそんなに大きな男根を加えてる癖に初めてなんてあったもんじゃないでしょうに。処女のくせにがばがばなんじゃないんですか。」

「そんな、酷い。ガバガバだなんて……」

「そうでしょう?あの飾られている男性器の模型なんて私のモノよりでかいですよ。あんなぶっといモノを普段から咥えているなら、あなたの穴はガバガバに広がって閉まらなくなってる筈だ」

 刑事さんは、こちらを一瞥もせずに辛辣な言葉を吐く。男の喘ぎ声と絶対零度の刑事さんの声と、俺の興奮した呼吸音。

 この場は混沌に陥っていた。

 もう我慢出来ない。

 俺は、画面を食い入るように見る刑事さんの後ろで服を脱ぎ、エロさは下着からという俺の信念の現れであるエッチな下着姿になり、刑事さんに近付く。

 刑事さんの肩をとんと、たたき、それでも振り返らず俺を無視する刑事さんの耳に吐息を吹きかけた。そして、近づいたからこそ分かる刑事さんの変化に目敏く見つける。

「刑事さんの息子、俺に助けさせてください。刑事さんは俺の疼いて仕方ない穴を助けて。刑事さんは市民を守る義務がありますよね?簡単なことです。刑事さんはその勃ちあがったペニスを僕の淫乱アヌスに突っ込めばいいんです。ただ、それだけで僕も刑事さんも救われます。ね?お願い?」

「……この淫乱雌豚、これ以上私のSouTを汚すのは許しませんよ?SouTは、俺の天使だったのに。SouTの植えた狂騒だけが俺を高ぶらせてくれたのに。実際のSouTは、淫乱で仕方ない変態魔人だったなんて。最悪ですよ。本当。最低です。もう、俺のSouTは死んだ。それならいっそのことSouTの初めてを貰って……」

 刑事さんは、ブツブツと話し出したと思うと、俺のアップしていた自慰動画を複数回見ないと分からないような情報を吐き出した。

 刑事さんは俺のことを知っていた!?

「SouT、そのエロいパンツを脱いで這いつくばれ。疼いて仕方ないお前の尻に入れてやるよ」

「……うわ!」

 刑事さんは、急に態度を急変させて俺を押し倒し容赦なくアヌスに指を突っ込んだ。

「流石に加えるのに慣れている穴だな。ああ、よく見れば、ここに飾ってあるディルド前に漫喫で使ってだやつだよな。森のオナニー時点でおかしいと思ってたんだけどな、まさか。まさか、お前が俺のSouTだったなんて。SouTの顔はこんなんだったんだな。俺の想像と違って何処にでもいるモブ顔じゃん。あーあ、夢壊れた。お前、責任取れよ。SouTの正体がお前とは知らずお前にメロメロになってた時間の分責任とれよ?俺だって、警察としてお前を貫いてやるからお前も義務を行使しろよ?SouTはさ、画面の中だけの生き物で実際に人間の性器欲しがっちゃいけないの。はい。あんたSouT失格」

「ひっ、いたっ……ごめんなさい。ごめんなさい」

 刑事さんは、俺に一方的に文句を言った後、お仕置きとお尻を容赦なく何回も叩いた。俺の穴は慣れるはずないのに叩かれるごとにカウパーでべっとりのペニスがぶらぶら揺れるから下半身はビチョビチョになってしまった。
 刑事さんは、どうやら俺のことを知っていたらしい。しかもこの口ぶりだとファンだったんじゃないかと。

「ほら、SouTの大好きなおちんちん入れてやるよ?欲しいならちゃんと欲しがりなさい。ついでに、俺にも謝って?今まで騙していてごめんなさいって」

「あ、騙していて、す、すいませんでしたぁあ!、許してください。ああ、ペニス縛らないで。出したいから出したいからこの紐とってよぉ!SouTのお尻は寂しくてたまらないの。SouTは処女童貞なのに入れられるのが大好きな変態魔人なんです。ください。刑事さんの大きいのちょうだい。お願い」

「大きい?」

「大きいおちんちんください!!」

「誰に?」

「淫乱なSouTはおっきいおちんちんが欲しいの!!」

「この淫乱が!!」

 刑事さんは俺のアヌスにペニスを突き立てていきなり貫いた。初めての男のペニス。おもちゃより柔らかくて暖かくて、少し小さい。だけど、今までの中で一番気持ち良い。
 見て。見て。見て。快感に支配された僕を見て。

「刑事さん、見て。俺を見て。淫乱な俺を見て。もっともっと熱いのくれないと駄目。もっともっと俺に見入って。刑事さんの目を俺の痴態しにて。もっと!もっと!もっと!もっと!!」

「!!!SouT、君は、今、まさしくSouTだ!ああ、愛してる俺のSouT!!!」














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