美術部ってさ!

久世 かやの

文字の大きさ
上 下
10 / 39
第一章 ~変り者が多い~

「美・デッサンのすすめ」 10

しおりを挟む
いつの間に帰ったのか…冬馬が片付けを終え、パーテーションの後ろから出ると、椿の姿はなかった。

戸締まりをして、榎本に声をかけてから部室を出ると、夕日に照らされた廊下に、椿が一人立っていた。

手には、飲みかけのブリックパックのレモンティーが握りられており、冬馬に気づくと笑いかけてきた。

「お疲れ!はい、コレ、お礼…ありがとな」

椿は上着のポケットから同じ物を取り出すと、手渡した。

「これは、ごていねいに、どうも…」

冬馬は遠慮なく受け取ると、ストローをさして一口飲んだ。

部活のあとの一杯は、サイコーですねぇ…などと呟いている冬馬に向かって、椿は思い出したように言った。

「そうだ、冬馬の絵見損ねたな…今度見に行っていいか?」

「もちろん…いつでもどうぞ…だいたい部室には来ていますから…」

「ああ、今度行くわ…他の変わり者っていう部員も見てみたいしな~」

「ははは…いっそ、入っちゃったらどうですか?」

「あ~それ榎本にも言われたわ~考えとく」

と言って椿は、子供のように笑った。

「そう言えば、主観を外すってヤツさ~」



椿と冬馬はデッサンについて語り合いながら、夕日に照らされた校舎を帰って行った。 


(おわり)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ユキ・almighty

綾羽 ミカ
青春
新宿区の高校に通う益田ユキは、どこから見てもただの優等生だった。 黒髪を綺麗にまとめ、制服の襟元を正し、図書館ではいつも詩集や古典文学を読んでいる。 クラスメートからは「おしとやかで物静かな子」と評され、教師たちからも模範的な生徒として目をかけられていた。 しかし、それは彼女の一面でしかない。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

野球部の女の子

S.H.L
青春
中学に入り野球部に入ることを決意した美咲、それと同時に坊主になった。

秘密のキス

廣瀬純一
青春
キスで体が入れ替わる高校生の男女の話

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

兄になった姉

廣瀬純一
大衆娯楽
催眠術で自分の事を男だと思っている姉の話

処理中です...