デュラハンに口付け

キマイラ

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番外編

ヒーローサイド2

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 眠る度に少女の夢を見ては彼女に弄ばれる。やめるようにと夜毎説得を試みているが、聞き入れられたことは無い。目覚める度に鏡に映る己の姿がげっそりしていくような気がする。現実においては一度も暴発していないが、色々と搾り取られているような気分だ。

 彼女は夢魔なのかもしれない。ふとそんな考えが浮かんだ。もしもそうだとしたら連日連夜同じ人物が夢に現れたことにも納得できる。 しかし夢魔なら理想の姿で現れるものじゃないのか。理想、なのか? 確かに肌はきめ細かくすべすべとしていそうではあるものの若すぎはしないだろうか。



+++++



 そして訪れた満月の夜。何かが起こる予感はしていた。この前の満月から毎晩のように彼女を夢に見るようになったのだ。今回もきっと何かが変わると思ってはいた。しかし、まさかこうなるとは。

「いつもはナニだけのくせにどういう風の吹きまわし?」

『聞きたいのはこっちだ』

 鏡に映る自身の姿は首が無かった。彼女の問いに答えたものの今日も聞こえていない。そう、聞こえていないのだ。これまでだって何度も彼女に答えているのに聞こえていない。制止の声すら伝わらなかった。そう思うとなんだか腹が立ってきた。

「え? ちょ、なに?」

 少女を腕の中に閉じ込めてその胸を揉みしだいたのはちょっとした意趣返しだった。少し脅かしてやるだけだ、さしたる問題じゃないだろう。そう、思っていたのに。腕の中の少女は小さくて柔らかい。少し力を入れれば折れてしまいそうな華奢な身体に不安を抱きながらも素肌の温かさにほっとする。相反する感情に踊らされて、一度落ち着こうと深く息をすれば滑らかな肌から先程まで使っていた石鹸の甘い花――ジャスミンの恍惚感を与える官能の香りが柔らかく立ち上って理性がグラグラと揺さぶられるのが自分でも分かった。

 ……いっそ犯すか? 向こうだってこれまで散々人を好き勝手弄んだのだからやり返されたって文句は言えないだろう。

 逃れようとする少女の抵抗を押さえつけるのは容易く、今後の展開を察して閉じようとした足を膝で割って開かせた。触れた先に潤いは無く、その上の快楽を得る為の突起に触れれば少女は小さく息を飲んでビクリとその身を震わせた。

「ねえ、ちょっと待って。って聞こえてるのかな? 首が無いけど。……まあいいわ。ねえ、私、耳年増なだけで経験が無いの」

 思わず手が止まった。

 ……今、なんて言った? 経験が無い? いやいや、ウソだろう? 耳年増なだけであんなことができるのか?

「その、好奇心に負けて色々したけど別に悪気は無かったのよ。……だからもうちょっと優しくしてほしいんだけど」

 いやむしろ経験の無い耳年増だからできたのか? 自分に向けられる欲を知らないからこそ、ただ好奇心のままに振舞った……?

 動きを止めた俺を不思議そう見る少女に気が付いて、そっと彼女を解放した。

『……その、すまん。悪かった』

 というか俺はいったい何を考えていたのだろう。いっそ犯すか? って、どんな鬼畜だ。いくら夢の中だとしても人の道に背きすぎだろう。薄っぺらい倫理観と自制心に自己嫌悪に陥る。だというのに少女は何でもないように口を開いた。

「しないの?」

『流石に駄目だろう』

「ねえ、こんなに大きくしてるのにやめちゃうの?」

 少女は既に立ち上がった物を優しく撫でながら問うてきた。

「それともこうやって女の子に攻められる方が好きとか?」

 そう言いながら柔らかな手で陰茎を扱く少女が上目遣いにこちらを窺う。

「思ったんだけどあなただけ気持ちいいなんてズルくない?」

 不満そうに尖らせた唇。ちらちらと見え隠れする舌の柔らかさと温度をつい思い出してしまう。

 これはまずい、早急に止めさせねば。

「意気地無し。据え膳食わぬは男の恥って知らないの?」

『ああ、もう! 知らんぞ、途中で嫌がってもやめないからな』

 できるだけ優しく、時間をかけて丁寧に。そう心がけて少女に触れる。彼女の情欲を煽るように、可能なら快楽を教え込むように。

 乳頭を指先で転がしながら耳に舌を這わせようとして触れられない。ああ、クソッ! なんで首が無いんだ。今の俺は触れ方を変える度に、肌をなぞる度に、身体を強張らせる少女に囁ける言葉も持たないのだ。首が無いことへの不満が今までよりも強くなった。

「……んっ」

 秘部へと手を伸ばせば、今度は濡れていた。裂け目を往復するようになぞると、時折小さく鼻にかかった吐息が聞こえた。

「……っ!」

 陰核に触れると、悲鳴を押し殺したように少女の喉が鳴って一瞬手を止めた。それでも彼女は他に嫌がるような素振りを見せなかったから、そのままくるくると円を描いて、擽って刺激を続けた。

 聞き慣なれたザアザアという水音ではなく、少女の荒い息だけが浴室に響いていて、それがこの上なく淫靡なものに思えた。

「やめて、あ、だめえ、やめ……っ!」

 快楽を滲ませた制止の声で止まる人間がいったいどこに居るだろう。少なくともこの場には居ない。びくびくと少女の腰が動きだして、そのまま絶頂を迎える淫らなさまを鏡越しに見届けた。

 今にも座り込んでしまいそうな少女の様子に床に座らせた方がいいだろうかと考えていると、彼女が鏡に手を付いた。そのまま火照りを冷まそうとでもするように頬を押し付けて、気持ち良さそうに目を細めている。快楽の余韻に蕩けたままの少女と鏡越しに目が合ったような気がした。その視線にこれまでの観察するような色とは別の何かが見え隠れしていた。濡れた髪の隙間から覗く首筋は白く、噛みつきたいと思った。

 指を滑り込ませた先の狭さに僅かな躊躇いを覚えて、やはりやめておこうかと思う。いくら誘われたとはいえこれ以上は良くない。そう理性が語りかけてくるのに、微かに洩れる少女の吐息の甘さの誘惑に負けてそれを黙殺した。

「あっ……!」

 指を二本に増やせば少女が小さな悲鳴を上げた。それをどうにかあやしながら慣らしていると、だんだん少女の息が荒くなってくる。指がある一点を掠めた時、少女が甘く啼いた。

「あ、んんっ! そこ、やだあ」

 いやいやという拒絶の言葉すらも甘ったるく、もっとその声を聞いていたいと思った。

「ああ、ね、そこ……やだ、あっ、あん、やめ、あっああ」

 キュウキュウと指を締め付けて達した少女の身体が崩れ落ちないよう支える腕に力を込めたところで目が覚めた。
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