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メオン様のお屋敷に伺ったらあのいやらしい女がそばにいてなんだかんだで追い返されてしまいましたわ

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「できた!!」
一か月ほどかかって出来上がったのは手作り感あふれるハンカチの刺繍。それでも普段から高級品を身に着ける品格に恥じぬように最高級の素材を使い糸の色、ハンカチの地の色も下町の職人のもとに足を運んで厳選したのだ。私が作ったのは刺繍の部分なのだけど何度も連取を重ね、作り直して満足のいく逸品だ。妥協なんてしていない。我ながら自信作だ。
「おめでとうございます、リリア様」
メイドのメアリも協力してくれた。私の夜食にリラックスできるハーブティーを用意してくれた。
「ありがとうメアリ!これできっとメオン様に振り向いてもらえますわ!」
「ええ、そうですね」
「それでは早速メオン様のもとに参りましょう!!」
「あっお待ちくださいリリア様!!」
私はさっそく王宮を出てメオン様の屋敷に向かった。
「メオン様はいらっしゃいますか?」
門番に声をかける。
「申し訳ございませんリリア姫殿下。メオン様は本日外出されておりまして屋敷にはおりません。」
「あら、タイミングが悪かったのかしら」
残念だけど仕方がない。また明日出直すことにしよう。
私はそういって馬車に乗り込もうとしたとき、メオン様を見かけた。
「メオン様!!」
なんだ、いらっしゃるじゃない。門番は予定を間違えたのかしら。こんなに早く会えるとは思わなかったわ。
メオン様はまだ私に気づいていらっしゃらないみたい。私は声をかけようとしたその時、
「メオン様、私がおつくりしたマフラーです。ぜひお使いになってください。」
ひょこッと屋敷から出てきて、高く愛らしい声でメオン様に話しかけているのはソアラだった。「え?あ、ああ、ありがとう」
メオン様は戸惑った様子で礼を言う。
「いいえ、こちらこそ、この前は助けていただいて、本当に感謝しております。」
「いいんだ、当然のことをしたまでだよ。君が無事でよかった。」
何の会話なのか細かい部分はわからない。でもあの泥棒女が私のメオン様に手作りマフラーなんか上げちゃって最初は戸惑ってたメオン様があんな風に嬉しそうに微笑んでる。許せない許せない。「ちょっとあなた!!」
「え?あ・・・」
ソアラは私を見ると気まずそうな顔をする。
「あなた。どうしてメオン様と親しげにしているのよ。」
我慢できずに話しかける。門番は私を止めることもできずあたふたしている。
「えっと・・・あの・・・」
ソアラはうれしそうな顔を引っ込めて泣きそうな顔でおどおどしている。ほんとに何をしても癇に障る女ね。
「リリア様、どうしてこちらに?今日はお会いする予定はなかったはずなのですが。」
ソアラの前にかばうように立つこわばった顔をしたメオン様。
「・・・・メオン様、ご機嫌麗しゅう」
私はドレスをつかんで丁寧にお辞儀をした。
「急遽、メオン様にお会いする用事ができたのでこちらに伺ったのですわ。」
 「それは何用でしょうか。」
メオン様の表情が厳しくなる。なんでそんな顔するのよ。婚約者なのに会いに来ちゃいけないっていうの。
「あら、そんなの決まっていますわ。メオン様とお話したかったからですわよ。」
わたしはハンカチの入った包みを握りしめる。
「リリア様、お戯れはやめていただきたい。私は貴女の遊び相手ではないのですよ。」
「あら、つれないことおっしゃらないでくださいませ。私はあなたの婚約者なのですよ。」
ヤバいほんとに泣きそう。涙が出そうになるのを必死に抑える。だってここで泣いたら負けだもの。あの女に負けるのだけはまっぴらだもの!!
「お話なら後日いくらでもできます。今日のところはお引き取りを。」
冷たい口調のメオン様。これ以上ここにいることはできなそうね。
「・・・わかりましたわ。本日はこれにて失礼いたしますわ。ソアラ嬢、わかっていらっしゃると思うけれどメオン様は私の婚約者なのです。あまり馴れ馴れしくしないでくださるかしら。」
私は精一杯威厳のある態度で言ったつもりだ。ソアラはうつむいている。表情は見えない。自分で言い返さずメオン様を盾にするなんてどこまで甘ちゃんなのかしら。こんな女にメオン様をかすめ取られたんじゃスキニー家の末代までの恥でしかないわ。
「では、私はこれで。また明日お会いしましょう。」
私はそういって丁寧に一礼して馬車に乗り込む。
こんなことぐらいで泣くものですか。私は絶対にあきらめないんだから。

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