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メオン様のためにリリアは初めてのことにも挑戦するから振り向いてくださらない?

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「メオン様は今日も私に振り向いてくださらなかった。」



 「リリア様、メオン様も忙しいんですよ。そんなに焦らなくてもよろしいんじゃないでしょうか?」
学校が終わってメオンに会いに行こうと馬車を手配したところで私のお世話係のメアリの声をかけられる。
「だめよ!こうしている間にもあの女はどんどんメオンに近づいているの!!」
焦りをにじませる私にメアリはあきれたように私をなだめる。
「ですがリリア様はもうメオン様と婚約なさってるじゃありませんか」
そう、私とメオンは10歳の時に婚約している。いや、王女の権限を使ってお父様に頼み込んで無理やり婚約を迫ったというべきだろうか。

「でも、まだ結婚してないもの!メオンだって嫌々私と婚約したに違いないわ!」
メオンは優しい人だから私のわがままを聞いてくれただけなのだ。

「いいえ、メオン様はそんなこと思っておられませんよ。きっとリリア様を思ってくださってるに違いありませんわ。」
そう慰めるメアリの言葉がほんとの意味で慰めてるってことでしかないのだと分かっている。
私はメオン様に愛されていない。
あの芋女のソアラに心奪われている。
でも私はまだ16歳。憎きソアラからメオン様の心を取り戻すチャンスはあるはずですわ。
ソアラに打ち勝つためのヒントを得ようとした街に出てきた。
かなり譲歩してメアリの言う通り平民のカッコとやらもしてやったわ。
庶民のカッコをした私もなかなかのものじゃない。
ああ、何でメオン様は私に心を向けてくださらないのかしら。
視線の先に見えたのは、赤茶色の髪を二つ結びにした女の子。その隣には黒髪の男の子がいる。
「あの子たち、何をやっているのかしら。」
メアリは私と同じ方向を見てああとつぶやいた。
「縫物ですよお嬢様」
ほら、と見せられた布は確かに針が通してある。二人は楽しそうに笑いながらおしゃべりをしながらちくちくと縫い物をしていた。
「職人に任せればよいのではなくて」
「いいえお嬢様、平民はみな、ああして服の布を再利用して長く使えるようにするのです。」
「ふうん、なんだか貧乏くさいわね。」
「まあ、王女のリリア様からしてみればそう見えるのかもしれませんが、あれが平民の普通なんです」
「そうなの?よくわからないわ」
「お嬢様は王都から出たことないですもんねえ」
メアリが苦笑する。
「そういえばそうだったわね」
私にとって狭い世界だったのかもしれないわ。そんなこと思いつきもしなかったもの。そういえばあのソアラもよくドレスのほつれを空き教室で縫っておりましたわ。私は貧乏くさいとあざ笑ってやったのだけど、もしかしたらメオン様はなんでも再利用とやらをする才を望んでいるのかもしれませんわね。
「私!!決めたわ!!メアリ!!」
「なっなんでしょう」
急に大声を出した私にメアリが驚く。
「私、裁縫を覚えるわ!!そしてメオン様の望むものを作れたらきっと振り向いてくれるはずだわ!!」
「そ、そうですか・・・しかし、お嬢様は刺繍は初めてでいらっしゃるのでわ。お怪我でもされたら大変ですわ。」
 転生後の私も転生前の私も縫物の経験は皆無だ。チクチク痛そうな針を見るのも苦手なのだがメオン様のためならなんだってできるのよ。
「大丈夫よ!!今から練習すればなんとかなるはずだわ!そうと決まればさっそく教師を手配しなさい!!もちろんその道のエリート中のエリート教師でお願いしますわよ!!」
「・・・・・・わかりました。お嬢様」
こうして私は初めて平民の使う針と糸を手に取ることになったのである。
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