追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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ユニコーン編

第百二十一話 退ける

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豚のような魔物が現れた瞬間、即座にシオンは付与魔法を使った。

「魔力よ、私の呼びかけに答えその力を示せ……コネクト・バフ!」

ブォン、とアレク達に、光のようなものが付属される。
付与魔法がついた証だ。
アレクが地魔法を使って、早速拘束を仕掛ける。

「バインド・ロック!」

魔物達が、岩によって拘束された。
しかし、溶けるような音と共に、最も簡単に拘束が解かれた。

「え」

アリスがそれに気づいて叫ぶ。

「酸よ! リリスは毒魔術を使う悪魔! 当たったら溶けるわよ!」
「酸!?」
「ブヒィイッ!」

魔物がこちらへ突っ込んでくる。
ライアンが剣で受け止めるが、剣がジワジワと溶け始めた。

「うわーっ! 俺の剣が!!」
「ライアン! 触っちゃダメだよ!」
「くそっ、魔法に切り替える!」

力の限り剣で押し返して後退すると、ライアンは炎魔法を唱えた。

「ファイアタワー!」

炎の柱が、魔物の一匹を包んだ。
魔物はすぐさま消し炭となる。
それを見ていたリリスが、ヒュウッと口笛を吹く。

「やりますわね! 人間にしては高火力ですの! でも……やはり、スタミナ切れは早いようで」
「うっ」

ライアンは元々、持っている魔力が少ない。
唯一得意な炎魔法も、すぐさま魔力が尽きてしまうのであまり頻発できないのだ。
しかし、「ありがとうライアン!」とアレクは叫ぶ。

「炎魔法が効くってわかったなら、十分!」
「援護するわ!」

アレクとユリーカが、それぞれ魔法を唱えた。

「ファイアボム!」
「エアスラッシュ!」

風魔法と炎魔法が合わさり、魔物達に襲いかかる。
ほとんどの魔物は一掃できたものの、一匹のみ無傷で佇んでいた。
リリスは得意げに微笑む。

「その子は私がちょっと手を加えた子ですわ。特別でしてよ」
「特別って」
「ぐぉおおおおおっ!」

魔物が叫ぶ。
衝撃波が飛んできて、アレクは反射的に魔法で防御壁を作って防いだ。

「ぶるぁっ!」
「!」

ライアンの元に突っ込んできたので、ライアンは慌てて魔物の突撃を避ける。
剣がないため、受け止めることができないのだ。
魔物は勢いを殺しきれず、壁へとそのまま突撃した。

「やば……」

壁が全て溶け、崩れ落ちる。
酷い攻撃であった。
あれに当たればひとたまりもないだろう。
ライアンは血の気の引く思いであった。

「あれ、どうすりゃいいんだ」

ライアンの言葉に、アレク達が唾を呑み込む。
触れたら即死、炎魔法は効かない。
ひとまず片っ端から魔法を試していくしかない。
しかし。

ガララッ……

「!?」

遺跡が音を立てて揺れ出す。
先ほどの魔物の突撃で、遺跡が崩れそうになっているらしい。

「早めに片付けないとマズそうね……」

ユリーカが冷や汗を拭った。
このままでは生き埋めだ。
派手な魔法も使えない。

「ごめーん! 俺さっきデカい魔法使っちゃった!」
「全くよ!」

ライアンが謝ったので、ユリーカが呆れたとばかりに返す。
アレクは考えを巡らせていた。

(倒さないとリリスに、サファを返してもらえない……でも、どの魔法が効くか試している時間もない。どうする、どうする……)

「お兄さん」

ポン、とアリスがアレクの肩を叩いた。
振り返ると、アリスがアレクに頼み事をしてきた。

「あの魔物と遺跡の崩れ、一分だけどうにかしてくれる?」
「……一分後にはどうにかできる?」
「うん」

時間稼ぎは必要らしい。
アレクは頷いて、魔物に向き直った。
リリスは未だに楽しげに笑っている。

「この状況でどうするのでしょう? とても面白いですわ!」

エンターテイメントとして、この場を消費しているらしい。
その態度にアレクは歯噛みした。

「止めてやる……遺跡の崩壊も、リリスも!」
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感想 449

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みんなの感想(449件)

はるはる
2023.08.16 はるはる

ユニコーン編はまだ続きがあるんですか?あるなら続きが読みたいです!できるなら、番外編も本にして欲しいです!

解除
越後屋みつえもん

ちょい待て父!
なんで王女から三男を名指しできた縁談を次男で代替えできると思ったし?(´・ω・`)

解除
八神 風
2022.07.28 八神 風

今回集まったメンバーって冒険者じゃなかった?

給与なのか?収入とか報酬が良いってなるかと

2022.07.29 雪塚 ゆず

ご感想ありがとうございます!
給与、給料のことを調べました。
給料となるとちょっと意味合いが変わってくるんですかね。訂正させていただきます。
ちなみにメンバーは全員冒険者で、依頼受けまくってる暇人が多いので金持ちです。

解除

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