224 / 227
ユニコーン編
第百十八話 度胸と根性
しおりを挟む
魔物の背にくくりつけられた、最後のカケラ。
その存在を認めた瞬間、アリスはアレク達に叫んだ。
「魔物の背中にあるカケラを回収して!」
「うぇっ!?」
「背中……?」
言われた通り目を凝らせば、確かに魔物の背に、小さなカケラのようなものがある。
アレクは拘束魔法をすぐさま仕掛けた。
「バインド・ロック!」
遺跡の床を利用した拘束魔法。
岩が突出し、魔物の体を複雑に拘束した。
「俺が行く!」
ライアンがすぐさま前に出ると、魔物へと走って近づいていった。
暴れて今にも岩を砕きそうな魔物の横を、掠め取るようにして通過する。
「これか!?」
「そう! それ! ガツさん、早く持ってきて!」
「ガツさん……?」
アリスがライアンを「ガツさん」と呼んだので、不思議そうな顔をして少年がアリスを見つめた。
しかしそれどころではない。
ガシャん!
「がぁあっ!」
とうとう拘束を破壊して、魔物がライアンに襲いかかる。
ライアンが剣を抜いて受け止めたことで、ライアンの手の中にあったカケラが床を滑り、隙間へと落下する。
「あっ!」
アレクとユリーカが、隙間へと駆け込んだ。
ライアンは魔物から受ける圧力を受け止めるので必死だ。
「ディフェンス・バフ!」
シオンがライアンに一点集中して、付与魔法をかける。
その間に、アレク達は顔を見合わせた。
ユリーカがアレクに向かって口を開く。
「アレク君、光魔法で奥まで照らして」
「わかった!」
アレクは指先に光魔法を灯すと、隙間へとその光源を落とす。
はるか奥先に、カケラが引っかかっているのが見えた。
「……私の風魔法でどうにか」
アレクは緻密な魔力操作を苦手とする。
ここはユリーカがやらねばならない。
ユリーカは集中力を高め、隙間に向かって風魔法を使った。
ゆっくり、ゆっくりとカケラがこちらに向かって浮上していく。
「もうそろそろ限界っ……!」
後ろからライアンの、絞り出すようなギブアップ宣言が聞こえてくる。
しかし焦っては失敗する。
「もうちょっと耐えて!」
アレクが叫んだ。
ユリーカは何とか魔法を使いこなし、自身の眼前へとカケラを持ってくる。
「あっ!」
直前で集中力が切れた。
そのまま再びカケラが落下しそうなところをーーすんでのところでアレクが受け止める。
「よしっ。アリス! 取れた!」
「持ってきて!」
アレクはアリスの元へと急ぐと、カケラを少年に手渡した。
「これで最後のはずだ!」
少年は迷うことなく、最後の空いているスペースにカケラを埋め込んだ。
ガララッ
「!」
扉が地鳴りを響かせて開き出す。
アレク達はすぐさまその先へと駆け込んだ。
「シオン! ライアンも早く!」
「おらぁっ!」
最後の力を振り絞り、ライアンは魔物を押し除けて走り出す。
そこにシオンが続いた。
アレク達は扉を閉めながら、ライアン達が来るのを待つ。
「うぉおおおおおっ!」
「うーーーっ」
ライアンとシオンが、こちらに向かって滑り込む。
魔物はすぐそこまで迫っていた。
「ぐるるるるる!」
「やばいって! 間に合わねーよ!」
少年が叫ぶ。
しかし、スレスレのところでアレク達は扉を閉め終えた。
「ふぅ~……なんとかなった」
思わず全員脱力し、その場へと座り込む。
少年は遺跡の天井を見上げると、そこに刻まれた紋様に口を開けた。
「これは……」
ユニコーンと、翼を持つ天使が戯れている紋様であった。
少年は横にいるアリスを揺らして、天井に視線を向けさせた。
「これって」
「こんなのあるなんて聞いてないぞ! 村にも伝わってない!」
少年とアリスの言葉をきっかけに、アレク達も上を見上げる。
「あ……」
その瞬間、アレクの『過去視』が発動した。
その存在を認めた瞬間、アリスはアレク達に叫んだ。
「魔物の背中にあるカケラを回収して!」
「うぇっ!?」
「背中……?」
言われた通り目を凝らせば、確かに魔物の背に、小さなカケラのようなものがある。
アレクは拘束魔法をすぐさま仕掛けた。
「バインド・ロック!」
遺跡の床を利用した拘束魔法。
岩が突出し、魔物の体を複雑に拘束した。
「俺が行く!」
ライアンがすぐさま前に出ると、魔物へと走って近づいていった。
暴れて今にも岩を砕きそうな魔物の横を、掠め取るようにして通過する。
「これか!?」
「そう! それ! ガツさん、早く持ってきて!」
「ガツさん……?」
アリスがライアンを「ガツさん」と呼んだので、不思議そうな顔をして少年がアリスを見つめた。
しかしそれどころではない。
ガシャん!
「がぁあっ!」
とうとう拘束を破壊して、魔物がライアンに襲いかかる。
ライアンが剣を抜いて受け止めたことで、ライアンの手の中にあったカケラが床を滑り、隙間へと落下する。
「あっ!」
アレクとユリーカが、隙間へと駆け込んだ。
ライアンは魔物から受ける圧力を受け止めるので必死だ。
「ディフェンス・バフ!」
シオンがライアンに一点集中して、付与魔法をかける。
その間に、アレク達は顔を見合わせた。
ユリーカがアレクに向かって口を開く。
「アレク君、光魔法で奥まで照らして」
「わかった!」
アレクは指先に光魔法を灯すと、隙間へとその光源を落とす。
はるか奥先に、カケラが引っかかっているのが見えた。
「……私の風魔法でどうにか」
アレクは緻密な魔力操作を苦手とする。
ここはユリーカがやらねばならない。
ユリーカは集中力を高め、隙間に向かって風魔法を使った。
ゆっくり、ゆっくりとカケラがこちらに向かって浮上していく。
「もうそろそろ限界っ……!」
後ろからライアンの、絞り出すようなギブアップ宣言が聞こえてくる。
しかし焦っては失敗する。
「もうちょっと耐えて!」
アレクが叫んだ。
ユリーカは何とか魔法を使いこなし、自身の眼前へとカケラを持ってくる。
「あっ!」
直前で集中力が切れた。
そのまま再びカケラが落下しそうなところをーーすんでのところでアレクが受け止める。
「よしっ。アリス! 取れた!」
「持ってきて!」
アレクはアリスの元へと急ぐと、カケラを少年に手渡した。
「これで最後のはずだ!」
少年は迷うことなく、最後の空いているスペースにカケラを埋め込んだ。
ガララッ
「!」
扉が地鳴りを響かせて開き出す。
アレク達はすぐさまその先へと駆け込んだ。
「シオン! ライアンも早く!」
「おらぁっ!」
最後の力を振り絞り、ライアンは魔物を押し除けて走り出す。
そこにシオンが続いた。
アレク達は扉を閉めながら、ライアン達が来るのを待つ。
「うぉおおおおおっ!」
「うーーーっ」
ライアンとシオンが、こちらに向かって滑り込む。
魔物はすぐそこまで迫っていた。
「ぐるるるるる!」
「やばいって! 間に合わねーよ!」
少年が叫ぶ。
しかし、スレスレのところでアレク達は扉を閉め終えた。
「ふぅ~……なんとかなった」
思わず全員脱力し、その場へと座り込む。
少年は遺跡の天井を見上げると、そこに刻まれた紋様に口を開けた。
「これは……」
ユニコーンと、翼を持つ天使が戯れている紋様であった。
少年は横にいるアリスを揺らして、天井に視線を向けさせた。
「これって」
「こんなのあるなんて聞いてないぞ! 村にも伝わってない!」
少年とアリスの言葉をきっかけに、アレク達も上を見上げる。
「あ……」
その瞬間、アレクの『過去視』が発動した。
0
お気に入りに追加
10,426
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……


双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。