追い出されたら、何かと上手くいきまして

雪塚 ゆず

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ユニコーン編

第百十四話 洞穴の最深部

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「お兄さん聞いて! この洞穴の奥にいるのはっ……お父様が一番制御できなかった悪魔なの!」
「それって!?」
「リリスっていう女悪魔! しかもリリスの能力はめちゃくちゃで、私すらも把握できない! ここは一旦ーー」

『ハァイ、姫さま』

「「!」」
「な……なんじゃこりゃ!」

頭に直接響くような声だった。
ライアンが戸惑い、自身の耳を思い切り塞ぐ。

『ふふ、そんなことをしても無駄でしてよ、人の子』
「うわーっ!? なんかやべーっ!」
『ごきげんよう皆さま。ようこそ、私の洞穴へ! 私の名はリリスと申しますわ』

その瞬間、少年が空中に向かって怒鳴った。

「違う! ここは……お前なんかの洞穴じゃない! ここはユニコーン様の洞穴だ!」
『あら? ユニコーン? もしかして、この封印物のことかしら?』
「!」

リリスの言葉に、アレクは目を見開く。

(やっぱりあったんだ……サファ!)

『これがご所望で?』

アレクはリリスに返事をするように叫ぶ。

「お願い返して! 僕の召喚獣なんだ!」
「なっ、ユニコーン様が召喚獣だと」

少年が信じられないものを見るようにこちらを凝視してくるが、それどころの話ではない。
すると、リリスは声を弾ませて答えた。

『私から奪い返してみなさいな! 私の魔術には仕掛けがありましてよ……! 是非とも最深部までいらしてください!』

「あっ、おい待て! 父ちゃんの仇!」

それ以降、リリスの声は聞こえなくなってしまった。
少年が悔しげに地団駄踏み、アリスに言う。

「おいチビ! さっき言ってた仕掛けってやつわからないのかよ!」
「っ、探してみるから大人しくしてて!」

「こいつ連れてくるんじゃなかった……!」とアリスが言うものだから、アレクは横で苦笑いを浮かべるしかない。

「アリス、どうしようか」
「お兄さん……とりあえず、進もう。この先にしか見えてこないものがあるもの」

アリスの言う通り、アレク達は洞穴の奥へと進んでいった。
しかし、奥に進めば進むほど、出てくる魔物の数が増えてくる。

「キリがないわ……!」
「狭いから剣も振りづれーし」
「魔力もちょっと少なくなってきたよぅ」

消耗が明らかに目に見える。
アレクは範囲の広い魔法を使って一掃することを考えたが、踏みとどまる。

(ダメだ……下手に刺激を与えたら、洞穴が崩れ落ちる!)

その時、アリスが何か見つけたらしい。
壁に向かって聞き取れない言語を紡ぐと、勢いよく壁に突進した。

「え!?」

結果、アリスの体が壁に吸い込まれて消えた。
壁の向こうから、アリスの声が聞こえてくるを

「お兄さん達も来て! 早く!」
「き、来てって……」
「俺が行く!」

少年がアレクを押し除けるような形で、壁へと体当たりした。
壁の向こうから、アリスと少年の揉み合いが聞こえてくる。

「なんでアンタが先に……」
「うっせぇ! それよりここなんだよ!」

もうなりふり構っていられない。
アレクは振り返り、戦闘を続ける三人に声をかける。

「ライアン、ユリーカ、シオン! ここに飛び込んで!」
「え!?」
「壁しかないけど……」
「僕に続いて!」
「うぇええええ!?」

アレクが壁に向かって走るものだから、つられて三人もついていく。
ぶつかるかと思われた瞬間、アレク達は壁をすり抜けた。

「……!」
「ここは」

抜けた先は、洞穴とは一風変わって、遺跡のような場所であった。
そこには魔物はいない。
進むべき道を、灯籠が照らしている。

「こんな場所があったのか……」
「ねえ! あれって」

シオンが先のほうを指差す。
そこには、固く閉じられた扉があった。

「……あの扉の先には、今までとは比べものにならないくらい強い魔物がいるはず」
「本当か」
「嘘つかない」

アリスは前に出ると、アレク達に確認を取る。

「みんな大丈夫? 扉、開けていい?」
「ちょっと待って」

ストップをかけたのはユリーカだった。

「休憩もとい……腹ごしらえといきましょう」
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