219 / 227
ユニコーン編
第百十三話 高位悪魔
しおりを挟む
「嫌だ! 俺も行く!」
「待ちなさい!」
アレク達が洞穴に行くとわかった瞬間、少年がついて行くと暴れ出す。
村人達は必死に少年を押さえようとするも、少年の勢いは止まらなかった。
気遣いながらも、シオンが尋ねる。
「ちなみに君、戦える……?」
「いけませんぜお嬢さん。こいつじゃ太刀打ちできない」
「うるせーっ! やるっつったらやるんだよぉ!」
そろそろ村人が力づくで止めようと決めたが、アリスが少年の前に立つ。
「君……死ぬ覚悟、ある?」
「え?」
「その女、強かったんでしょ。君死ぬよ。それでもいいならいいけど」
「……おう!」
少年が力強く頷いた。
村人達は、顔を真っ青にして否定する。
「無茶だ! やめなさい!」
「お前まで死ぬ気か!」
そんな村人達に、少年は睨みを利かせて言う。
「父ちゃんが殺されてんだよ……! 仇を討ちたい!」
少年は槍を握りしめて、振り切るようにして外に走って行く。
村人達の言葉に耳を貸すつもりはないらしい。
アレクはアリスの横に並び、アリスに笑いかける。
「珍しいね、こんなこと言い出すの」
「……別に。ただ、似てたから」
素っ気ないアリスの返答に、照れていることが伝わってくる。
アレクがアリスの頭を撫でれば、「やめてお兄さん」と更にぶっきらぼうに言われた。
そんなアレクに、村人の一人が話しかけてくる。
「旅のお方……お願いです。あの子をお守りください。村の者は、皆家族なのです」
「はい、任せてください。僕が責任持って連れ帰ります」
アレクの宣言に、村人達は胸を撫で下ろす。
建物を出ると、少年がアレク達のことを待っていた。
「早く行くぞ! 案内する!」
「偉そう……」
「そこのチビ、うるさいぞ!」
アリスが呟いたことで、少年が喧嘩を売る。
どうやらカチンときたようで、アリスはアレクの手を握って言う。
「私、こいつ嫌い」
「あはは……」
先行きが不安である。
村から離れ、開かれた道を歩いていけば、洞穴が見えてきた。
そこで、少年がアレク達のほうへと体を向けた。
「ここから先は魔物が出てくる。注意しろ」
少年の一言をきっかけに、アリスが前に出た。
「呼びかけられるかやってみる」
自身のツノをギュッと握り、アリスが目を瞑る。
しばらくすると、弾かれたように顔を上げた。
「ダメ……主導権が奪われてる」
「それって」
「この奥にいるのはきっと、本当に高位の悪魔。私の呼びかけに答えてくれないほどに、魔物達が支配されてる」
全体に緊張が走る。
ライアンが落ちていた木の棒を拾うと、炎魔法を使って火をつける。
「俺が先に行く! みんな、ついてきてくれ!」
「わかった!」
「任せたわよ」
ライアンを先頭に、アレク達が一列になって洞窟に足を踏み入れる。
ひんやりとした冷気が肌を撫で、水の滴る音が聞こえてきた。
そこから十分ほど歩き、アレクが口を開く。
「ねえ……この洞窟って、どれくらいの広さなの?」
その質問に、少年が答えた。
「ユニコーン様が祀られている神棚はもっと奥だ。ここは俺達の、成人の儀の場所でもある」
「成人の儀?」
「魔物が出てくるだろ。魔物を切り抜けて、ユニコーン様の神棚にお供えができれば、立派な一人前として認められるんだ」
その時、暗闇から魔物が飛び出してきた。
「うわぁっ!?」
突然のことで驚き、ライアンが松明を落とす。
炎が下に落ちたことで、洞窟全体を明るく照らした。
「ぎゃぎゃっ!」
「ライアン伏せて!」
ユリーカが魔物に向かって、風魔法を放つ。
魔物を撃退するも、次から次へと湧いてきた。
「うおおお! やるぞ!」
「うぅ、多いよぉ」
「みんな離れないで!」
アレク達が魔物を振り払いながら進んでいくが、少年がここで違和感を訴え出す。
「おかしい! こんなに魔物の数が多いのも……それに強いのも!」
「つまり!?」
「異常事態だ! 洞穴の長さも長すぎる!」
アリスはどうやら心当たりがあるらしく、少し考え伏せっていた。
「長さを変える……空間……それに、高位悪魔」
「なにブツブツ言ってるんだ!」
少年が怒鳴るもので、柄にもなく「うるさい!」とアリスは声を荒げる。
「本当にアイツなら……ここに来て最悪のカードを引いたわ!」
「さ、最悪って」
アリスの発言に、シオンは怯え気味に洞穴の奥を見つめた。
「待ちなさい!」
アレク達が洞穴に行くとわかった瞬間、少年がついて行くと暴れ出す。
村人達は必死に少年を押さえようとするも、少年の勢いは止まらなかった。
気遣いながらも、シオンが尋ねる。
「ちなみに君、戦える……?」
「いけませんぜお嬢さん。こいつじゃ太刀打ちできない」
「うるせーっ! やるっつったらやるんだよぉ!」
そろそろ村人が力づくで止めようと決めたが、アリスが少年の前に立つ。
「君……死ぬ覚悟、ある?」
「え?」
「その女、強かったんでしょ。君死ぬよ。それでもいいならいいけど」
「……おう!」
少年が力強く頷いた。
村人達は、顔を真っ青にして否定する。
「無茶だ! やめなさい!」
「お前まで死ぬ気か!」
そんな村人達に、少年は睨みを利かせて言う。
「父ちゃんが殺されてんだよ……! 仇を討ちたい!」
少年は槍を握りしめて、振り切るようにして外に走って行く。
村人達の言葉に耳を貸すつもりはないらしい。
アレクはアリスの横に並び、アリスに笑いかける。
「珍しいね、こんなこと言い出すの」
「……別に。ただ、似てたから」
素っ気ないアリスの返答に、照れていることが伝わってくる。
アレクがアリスの頭を撫でれば、「やめてお兄さん」と更にぶっきらぼうに言われた。
そんなアレクに、村人の一人が話しかけてくる。
「旅のお方……お願いです。あの子をお守りください。村の者は、皆家族なのです」
「はい、任せてください。僕が責任持って連れ帰ります」
アレクの宣言に、村人達は胸を撫で下ろす。
建物を出ると、少年がアレク達のことを待っていた。
「早く行くぞ! 案内する!」
「偉そう……」
「そこのチビ、うるさいぞ!」
アリスが呟いたことで、少年が喧嘩を売る。
どうやらカチンときたようで、アリスはアレクの手を握って言う。
「私、こいつ嫌い」
「あはは……」
先行きが不安である。
村から離れ、開かれた道を歩いていけば、洞穴が見えてきた。
そこで、少年がアレク達のほうへと体を向けた。
「ここから先は魔物が出てくる。注意しろ」
少年の一言をきっかけに、アリスが前に出た。
「呼びかけられるかやってみる」
自身のツノをギュッと握り、アリスが目を瞑る。
しばらくすると、弾かれたように顔を上げた。
「ダメ……主導権が奪われてる」
「それって」
「この奥にいるのはきっと、本当に高位の悪魔。私の呼びかけに答えてくれないほどに、魔物達が支配されてる」
全体に緊張が走る。
ライアンが落ちていた木の棒を拾うと、炎魔法を使って火をつける。
「俺が先に行く! みんな、ついてきてくれ!」
「わかった!」
「任せたわよ」
ライアンを先頭に、アレク達が一列になって洞窟に足を踏み入れる。
ひんやりとした冷気が肌を撫で、水の滴る音が聞こえてきた。
そこから十分ほど歩き、アレクが口を開く。
「ねえ……この洞窟って、どれくらいの広さなの?」
その質問に、少年が答えた。
「ユニコーン様が祀られている神棚はもっと奥だ。ここは俺達の、成人の儀の場所でもある」
「成人の儀?」
「魔物が出てくるだろ。魔物を切り抜けて、ユニコーン様の神棚にお供えができれば、立派な一人前として認められるんだ」
その時、暗闇から魔物が飛び出してきた。
「うわぁっ!?」
突然のことで驚き、ライアンが松明を落とす。
炎が下に落ちたことで、洞窟全体を明るく照らした。
「ぎゃぎゃっ!」
「ライアン伏せて!」
ユリーカが魔物に向かって、風魔法を放つ。
魔物を撃退するも、次から次へと湧いてきた。
「うおおお! やるぞ!」
「うぅ、多いよぉ」
「みんな離れないで!」
アレク達が魔物を振り払いながら進んでいくが、少年がここで違和感を訴え出す。
「おかしい! こんなに魔物の数が多いのも……それに強いのも!」
「つまり!?」
「異常事態だ! 洞穴の長さも長すぎる!」
アリスはどうやら心当たりがあるらしく、少し考え伏せっていた。
「長さを変える……空間……それに、高位悪魔」
「なにブツブツ言ってるんだ!」
少年が怒鳴るもので、柄にもなく「うるさい!」とアリスは声を荒げる。
「本当にアイツなら……ここに来て最悪のカードを引いたわ!」
「さ、最悪って」
アリスの発言に、シオンは怯え気味に洞穴の奥を見つめた。
0
お気に入りに追加
10,426
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。
だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。
その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました
ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……


双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ
海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。
あぁ、大丈夫よ。
だって彼私の部屋にいるもん。
部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。