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超大規模依頼編
第二十九話 懐かしき面影
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エルミア。
かつて人間の裏切りにあい殺された、天族の娘。
アレクの先祖であり、その魂の母。
ドッーーと心臓が大きく音を立てた。
「あ、え、エルミア様……?」
アレクが恐る恐る尋ねると、少し驚いた顔をして彼女は首を横に振る。
「いや。僕はエルミアじゃない」
「……?」
微かな違和感が滲む。
女性だと思っていたが、男性なのだろうか。
その人から放たれる中世的な雰囲気が、性別という概念を曖昧にさせる。
典型的な天族の特徴だ。
「あれ、もういいの?」
マルがその人に向かって可愛らしく首を傾げた。
その人は穏やかに笑って頷く。
「うん。もういい」
「そっかぁ」
マルは再び水になると、その人の後ろまで一気に飛んだ。
「アレク君、今日はおしまいみたい。でもまたその子殺しに行くから」
「!」
その一言で、アレクは状況を理解する。
マルと、現れた彼女ーー彼、だろうか。はグル。一緒になってアリスの命を狙っている。
そして今、戦闘が開始するかは彼の手に委ねられている。
「………」
しばらく黙って見つめ合う。
見れば見るほどエルミアと瓜二つだ。
彼は一体何者なのだろうか。
「あのっ……」
アレクが何か言いかけた時、彼がこちらに向かって歩き出す。
アリスのほうへ行こうとしているのかと警戒するが、どうやら違うらしい。
彼はアレクの前に止まると、アレクを見下ろしてくる。
(どうする……攻撃すべき? でも、敵意を感じない)
「僕のこと、気になる?」
「!」
そう尋ねられ、アレクは首を縦に振った。
彼は微笑むと、その唇を僅かに開く。
「僕はーーいや、やめておこう。面白くない」
「あなたは、天族の人ですか」
「どう答えるべきなのかな、これ」
アレクの質問に、悩ましげな表情を彼は浮かべた。
すると後ろにいたマルが助言する。
「一応合ってるからそう言えばいいんじゃない?」
「そっか。じゃあ、うん。僕は天族だよ」
「! 僕以外の人がいたなんて」
「まあ、驚くよね」
クスクスと彼は笑うと、こちらに手を伸ばしてきた。
殴られる、と思ってその手をアレクが避けると、彼は何だか悲しげな顔をする。
「ごめん」
「あ……」
何だか悪いことをしてしまった気分になり、アレクはうつむく。
敵であるはずなのに、アレクはこの人を悲しませたくないと思ってしまった。
「少しでいいんだ。触れさせてくれないか」
「……」
少し彼のほうへ近寄れば、彼は嬉しそうにアレクの頭を撫でた。
その手の優しさ、暖かさ、柔らかさ、全てにアレクは泣きそうになる。
なぜかわからない。なぜか、酷く懐かしい。
「大きくなったね、アレク」
「僕のこと、知ってるんですか」
「こっちが一方的にだったけどね」
彼は離れると、マルの隣へと歩いて戻っていった。
「僕のことが気になるなら、ガブリエルを探してみな。彼女ならヒントを与えてくれるだろう」
「あーー」
瞬きの間に二人は消えてしまった。
残されたアレクは我に返ると、倒れたアリスの元へと急ぐ。
「アリス!」
「うぅ……気持ちわる」
「ご、ごめん。これでよくなるといいんだけど」
軽めの治癒魔法をかけ、アレクはアリスに謝罪を重ねる。
元気になったアリスは、立ち上がるとアレクに急かした。
「ありがとうお兄さん。でも、あいつのところに行かないと」
「そうだったね。行こうか」
アリスと手を繋ぐと、アレクは大悪魔のほうを目指した。
かつて人間の裏切りにあい殺された、天族の娘。
アレクの先祖であり、その魂の母。
ドッーーと心臓が大きく音を立てた。
「あ、え、エルミア様……?」
アレクが恐る恐る尋ねると、少し驚いた顔をして彼女は首を横に振る。
「いや。僕はエルミアじゃない」
「……?」
微かな違和感が滲む。
女性だと思っていたが、男性なのだろうか。
その人から放たれる中世的な雰囲気が、性別という概念を曖昧にさせる。
典型的な天族の特徴だ。
「あれ、もういいの?」
マルがその人に向かって可愛らしく首を傾げた。
その人は穏やかに笑って頷く。
「うん。もういい」
「そっかぁ」
マルは再び水になると、その人の後ろまで一気に飛んだ。
「アレク君、今日はおしまいみたい。でもまたその子殺しに行くから」
「!」
その一言で、アレクは状況を理解する。
マルと、現れた彼女ーー彼、だろうか。はグル。一緒になってアリスの命を狙っている。
そして今、戦闘が開始するかは彼の手に委ねられている。
「………」
しばらく黙って見つめ合う。
見れば見るほどエルミアと瓜二つだ。
彼は一体何者なのだろうか。
「あのっ……」
アレクが何か言いかけた時、彼がこちらに向かって歩き出す。
アリスのほうへ行こうとしているのかと警戒するが、どうやら違うらしい。
彼はアレクの前に止まると、アレクを見下ろしてくる。
(どうする……攻撃すべき? でも、敵意を感じない)
「僕のこと、気になる?」
「!」
そう尋ねられ、アレクは首を縦に振った。
彼は微笑むと、その唇を僅かに開く。
「僕はーーいや、やめておこう。面白くない」
「あなたは、天族の人ですか」
「どう答えるべきなのかな、これ」
アレクの質問に、悩ましげな表情を彼は浮かべた。
すると後ろにいたマルが助言する。
「一応合ってるからそう言えばいいんじゃない?」
「そっか。じゃあ、うん。僕は天族だよ」
「! 僕以外の人がいたなんて」
「まあ、驚くよね」
クスクスと彼は笑うと、こちらに手を伸ばしてきた。
殴られる、と思ってその手をアレクが避けると、彼は何だか悲しげな顔をする。
「ごめん」
「あ……」
何だか悪いことをしてしまった気分になり、アレクはうつむく。
敵であるはずなのに、アレクはこの人を悲しませたくないと思ってしまった。
「少しでいいんだ。触れさせてくれないか」
「……」
少し彼のほうへ近寄れば、彼は嬉しそうにアレクの頭を撫でた。
その手の優しさ、暖かさ、柔らかさ、全てにアレクは泣きそうになる。
なぜかわからない。なぜか、酷く懐かしい。
「大きくなったね、アレク」
「僕のこと、知ってるんですか」
「こっちが一方的にだったけどね」
彼は離れると、マルの隣へと歩いて戻っていった。
「僕のことが気になるなら、ガブリエルを探してみな。彼女ならヒントを与えてくれるだろう」
「あーー」
瞬きの間に二人は消えてしまった。
残されたアレクは我に返ると、倒れたアリスの元へと急ぐ。
「アリス!」
「うぅ……気持ちわる」
「ご、ごめん。これでよくなるといいんだけど」
軽めの治癒魔法をかけ、アレクはアリスに謝罪を重ねる。
元気になったアリスは、立ち上がるとアレクに急かした。
「ありがとうお兄さん。でも、あいつのところに行かないと」
「そうだったね。行こうか」
アリスと手を繋ぐと、アレクは大悪魔のほうを目指した。
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